職場巡視チェックリスト(病院版)|30項目と根拠・頻度・記録の書き方【Excelテンプレート】

執筆・監修:白澤一弘(日本医師会認定産業医)
最終確認日:2026年10月29日

結論

  • この記事は、常時50人以上の労働者を使用する病院・有床診療所の職場巡視を前提にしています。衛生管理者が少なくとも毎週1回、産業医が少なくとも毎月1回(条件を満たせば少なくとも2か月に1回)巡視します
  • 病院の巡視でオフィスと違うのは、患者の移乗と腰痛、針刺し、空気感染、化学物質、放射線、当直と夜勤です。これを10分類・30項目のチェックリストにしました。この記事に全項目を載せています
  • 病棟・外来・手術室は「事務所」ではありません。明るさなどの基準は、事務所衛生基準規則ではなく労働安全衛生規則で見ます
  • 手術室・放射線部門などが無い施設は、その項目に「/(該当なし)」をつけて使えます。1回の巡視で全部の部署を回らなくてもかまいません

Excelのチェックシート(30項目・記入例つき)は、無料でダウンロードできます(会社名・お名前・メールアドレスの入力が必要です)。

職場巡視チェックシート(病院版)をダウンロードする →

職場巡視の頻度と義務。誰が行うか

職場巡視は、作業場を実際に歩いて、働く人の健康を損なうおそれがないかを確かめることです。病院の職場巡視で見るのは、職員の安全と健康です。院内感染対策の巡回と重なる所もあるので、気づいたことは院内の委員会どうしで共有すると、二度手間が減ります。

巡視する人頻度根拠
衛生管理者少なくとも毎週1回労働安全衛生規則 第11条第1項
産業医少なくとも毎月1回。条件を満たし、事業者の同意を得た場合は、少なくとも2か月に1回労働安全衛生規則 第15条第1項

産業医の巡視を2か月に1回にできるのは、事業者が産業医に、次の情報を毎月1回以上提供している場合です。

  • 衛生管理者が行った巡視の結果
  • 衛生委員会などで調査審議したうえで、事業者が産業医に提供することとした、健康障害を防ぐために必要な情報

日程が合わないことだけを理由に回数を減らすことはできません。

50人未満の病院・診療所では

衛生管理者・産業医の選任義務と、この巡視の義務は、常時50人以上の事業場が対象です。人数は法人全体ではなく、事業場ごとに数えます(「従業員50人で発生する6つの義務と期限」)。

50人未満の診療所などでは法令上の巡視の頻度の定めはありませんが、このチェックリストは、職場を点検するときにも使えます。ただし、項目によって義務の対象は違います。たとえばストレスチェックは、50人未満の事業場では2028年4月1日から義務になります。

職場巡視チェックリスト(病院版・30項目)

〇△×/のつけ方

評価つけるとき
〇 問題なしそのままでよい
△ 改善を検討法令には触れないが、放っておくと不調や事故につながる
× 要改善法令の基準を下回っている、またはけが・急病に直結しうる
/ 該当なしその部署・設備・作業がない

△・×をつけた項目は、「3階処置室の針捨て容器が満杯」のように場所と状態をセットで書きます。次の人が同じ場所を見に行けるからです。

1. 患者の移乗と腰痛(2項目)

項目見るところ
全介助の患者の移乗に、リフトやスライディングシートを使っている(人の手で抱え上げていない)器具が病棟にあるか、数が足りているか、実際に使われているか
ベッド・ストレッチャーの高さを処置のときに合わせ、職員が中腰を続けずに済んでいる処置中の職員の姿勢

2. 床・通路・明るさ(3項目)

項目見るところ
床が濡れておらず、コード類が足元をはっていない処置室・病室の床、医療機器のコード
廊下にカート・点滴台・機器が置きっぱなしになっていない使ったあとの機器が通路に残っていないか
処置・調剤・記録をする手元が十分に明るい照度計で手元を測る。切れた照明がないか

3. 針刺し・血液(3項目)

項目見るところ
針捨て容器が使う場所のすぐ近くにあり、満杯になる前に替えている容器の置き場所。満杯になっていないか、替えるルールがあるか
使った針にキャップをし直していない。安全装置付きの器材を使っているリキャップの習慣が残っていないか
血液・体液で汚れた物が決まった場所で処理され、床などの消毒の手順がある処理場所と手順が決まっているか

4. 感染の予防(職員・2項目)

項目見るところ
手洗いの設備・手指消毒剤と、手袋・ガウン・マスク・ゴーグルが使う場所の近くにそろっている切れていないか、取りに行く距離が遠くないか
結核など空気感染の患者に対応する職員が N95 マスクを使い、顔に合うかを確かめている(フィットテスト)N95マスクの置き場所と、フィットテストの記録

5. 化学物質(5項目)

項目見るところ
ホルムアルデヒドを扱う場所(病理・手術室など)で、局所排気が動き、作業環境測定をしている局所排気装置が動いているか、測定の結果
エチレンオキシドの滅菌器のまわりで、排気がされ、取扱いの注意が掲示されている排気と掲示
抗がん剤の調製に安全キャビネットや閉鎖式の器具を使い、手袋・ガウンを着けている調製する場所と保護具
内視鏡などの高水準消毒をする場所が換気され、手袋・ゴーグルを着けている換気と保護具
薬品・消毒薬を小分けした容器に、中身の名前と注意が書いてある名前の分からないボトルがないか(表示のほか、文書で知らせる方法もある)

6. 放射線(2項目)

項目見るところ
エックス線などの管理区域が標識で示され、関係のない人が入らないようになっている標識と、扉・立入りの管理
管理区域で働く職員が線量計を正しい位置に着け、防護衣・防護めがねを使っている線量計の位置(下の早見表)。位置が違えば×。防護めがねを着けていないだけなら△(電離放射線障害防止規則に、防護めがねの着用そのものを義務づける条文はない)

7. 休憩・当直・更衣(3項目)

項目見るところ
職員の休憩場所が患者のいる場所と分かれていて、落ち着いて休めるナースステーションの奥で立ったまま食べていないか
当直室・仮眠室が男女別にあり、寝具が清潔に保たれている男女別か、シーツの交換
更衣室・職員のトイレが清潔で、仕事着と私物を分けて置ける清掃の状況、置き場所

8. 暴力・ハラスメント(2項目)

項目見るところ
患者・家族からの暴力・暴言・ハラスメントがあったときの相談先と対応の手順が決まり、職員が知っている職員に「何かあったら誰に言うか」を聞く
夜間や救急外来でも、すぐ応援や警備を呼べる呼び出しの方法と、夜間の人数

9. 緊急時(1項目)

項目見るところ
消火器・非常口・避難経路の前に物がないストレッチャーや段ボールが置かれていないか

10. 健康管理(7項目)

項目見るところ
夜勤に常時入る職員が、6か月以内ごとに健康診断を受けている年1回で済ませていないか
放射線業務・特定化学物質の業務の職員が、所定の特殊健康診断を受けている対象者の名簿と受診の記録。どの業務が対象かは物質ごとに決まっている(下の早見表の注)
職員の結核の健康診断を毎年度している委託・非常勤の職員の扱い
長時間労働の職員を把握し、必要な人を医師の面接指導につないでいる把握の方法と、面接指導までの流れ
ストレスチェックをして、結果を職場の改善に使っている常時50人以上の事業場で実施していなければ×(50人未満は2028年4月1日から義務)。集団分析をしていない、または分析の結果、必要とした改善に取り組んでいなければ△(どちらも努力義務)。人数の少ない部署は、個人が分からない単位にまとめて見る
B型肝炎などの予防接種・抗体の確認と、針刺しが起きたときの受診の流れが決まっている夜間に針刺しが起きたときの連絡先
敷地内禁煙が守られ、煙が流れてこない敷地内で吸っていないか。病院は原則として敷地内禁煙で、例外は法律の要件を満たした屋外の喫煙場所だけ(健康増進法)。院内で全面禁煙にしているなら、そのルールが守られているか

30項目に入っていないもの

  • 機械・医療ガス・電気設備の安全:このシートの範囲外です。担当部署の点検で確かめてください
  • 休養室・休養所:常時50人以上、または常時女性30人以上の事業場では、横になれる休養室・休養所を男女別に設ける義務があります(労働安全衛生規則 第618条)。休憩の設備・当直室とは目的が違います。物置になっていないか、必要なときにすぐ横になれるかを見ます
  • 医師の働き方改革で医療機関に求められる面接指導:このシートでは扱っていません。健康管理の「医師の面接指導」の項目は、労働安全衛生法の長時間労働者の面接指導です

迷いやすい項目の根拠(早見表)

〇△×で迷ったときや、改善を病院にお願いするときに使ってください。「義務」と「努力義務」「指針」を分けています。

作業場・休憩

項目基準義務/努力義務根拠
患者の抱え上げ全介助の必要な人の移乗などはリフト等を積極的に使い、原則として人力による人の抱上げは行わせない指針職場における腰痛予防対策指針(平成25年改訂)
床・通路床はつまずき・滑りの危険がないように保つ。通路は常に有効に保つ義務労働安全衛生規則 第540条・第542条・第544条
照度精密な作業300ルクス以上、普通の作業150ルクス以上義務同 第604条
照明設備の点検6か月以内ごとに1回義務同 第605条
汚物の処理一定の場所で露出しないように処理し、病原体で汚れるおそれのある床・容器などは必要に応じて消毒する義務同 第624条
休憩の設備有効に利用できる休憩の設備を設けるよう努める努力義務同 第613条
睡眠・仮眠の場所夜間に睡眠を与える必要があるときや仮眠の機会があるときは、男女別に設け、寝具を備え、感染を予防する義務同 第616条
小分けした容器の表示ラベル表示の対象物などを容器に入れて保管するときは、名前と人体への作用を明示する(容器への表示のほか、文書を渡すなどの方法もある)義務(対象物の場合)同 第33条の2

照度の「300ルクス以上・150ルクス以上」は、事務所衛生基準規則の数字(一般的な事務作業300ルクス以上)と似ていますが、区分の名前が違います。病棟・外来などの作業場は労働安全衛生規則で、事務室の部分は事務所衛生基準規則で見ます。

放射線(電離放射線障害防止規則)

項目基準根拠
管理区域実効線量が3か月で1.3mSvを超えるおそれのある区域などを標識で明示し、必要のある人以外を立ち入らせない第3条
線量の限度(実効線量)5年で100mSv、1年で50mSvまで。妊娠の可能性のある女性は3か月で5mSvまで。妊娠と診断された女性には、別の限度がある(第6条)第4条・第6条
線量の限度(眼の水晶体)5年で100mSv、1年で50mSvまで第5条
線量計を着ける位置男性と、妊娠の可能性がないと診断された女性は胸、その他の女性は腹。最も多くさらされる部位がそれと違うとき(防護衣を着けたときの襟元など)は、その部位にも着ける第8条
健康診断放射線業務に常時従事し管理区域に立ち入る人は、雇入れ・配置替えの際と、6か月以内ごとに1回第56条

健康管理

項目基準根拠
夜勤のある職員の健康診断深夜業に常時従事する人は、配置替えの際と6か月以内ごとに1回労働安全衛生規則 第45条・第13条第1項第3号ヌ
結核の健康診断病院・診療所で業務に従事する人は、毎年度、結核の定期健康診断を受ける感染症法 第53条の2・同施行令 第12条第1項第1号
ストレスチェック1年以内ごとに1回実施する(常時50人以上の事業場。50人未満は2028年4月1日から)。集団分析と職場の改善は努力義務労働安全衛生法 第66条の10・労働安全衛生規則 第52条の9・第52条の14
患者・家族からのハラスメントカスタマーハラスメント対策が、事業主の雇用管理上の措置義務になった(2026年10月1日施行)労働施策総合推進法の改正

「夜勤のある職員」と「深夜業に常時従事する職員」は同じではありません。たまに夜勤に入る人まで、6か月ごとの健康診断の対象になるわけではありません。逆に、夜勤に常時入っているのに年1回で済ませているなら×です。

特殊健康診断は、どの業務が対象かが物質ごとに決まっています。病院でよく扱うホルムアルデヒドとエチレンオキシドは、特定化学物質障害予防規則の特殊健康診断の対象物質(別表第3)には載っていません。ただし、健康診断がいらないという意味ではありません。どの健康診断が要るかは、産業医に確かめてください。

針刺しを防ぐやり方(リキャップをしない・安全器材を使う)、N95マスクのフィットテスト、予防接種・抗体の確認は、上の早見表の条文のように、やり方そのものが条文に書かれている項目ではありません。職員を病原体から守るための対策として入れています。

巡視記録の書き方(記入例)

チェックシートの〇△×に加えて、×や△をつけた項目は、次のように記録します。病院名・人名・日付は、説明のための架空の例です。

巡視日:2026年11月10日(火)15:00〜15:50 / 巡視者:衛生管理者・産業医
巡視した部署:3階・4階病棟、放射線科、当直室
評価:×(針捨て容器が使う場所のすぐ近くにあり、満杯になる前に替えている)
気づいたこと・場所:3階処置室の針捨て容器が満杯
その場の対応:巡視中に看護師長に伝え、当日中に容器を交換
改善事項:針捨て容器を処置室ごとに増やし、満杯になる前に替えるルールを決める
担当・期限:看護部・11月17日

評価:×(夜勤に常時入る職員が、6か月以内ごとに健康診断を受けている)
気づいたこと:夜勤に常時入る看護補助者の健康診断が年1回だけ
改善事項:前回の健康診断から6か月以内に次を受けられるよう、対象者ごとに日程を組む
担当・期限:総務課・12月25日

次の巡視では、前回の×と△から先に見ます。直っていれば、確かめた日と結果を書き足して完了です。前回の記録そのものは書き換えずに残します。

記録に、個人が特定できることは書きません。巡視の記録は衛生委員会に報告し、院内で共有するものです。「◯◯さんが針刺しをした」ではなく、場所と状態で書きます。

巡視記録そのものの保存期間は、法令では決まっていません。衛生委員会の議事録(3年保存)に合わせて、3年保存にしておくと扱いやすくなります。

病院の巡視を形だけにしない3つのコツ

コツやること
巡視の前に一覧を用意する部署ごとの最後に巡視した日と、直っていない×・△の一覧を見て、その日に回る部署を決める。健康診断の受診状況など、書類で確かめる項目は事前に見ておく
夜のことは、夜勤の人に聞く当直室の寝具、夜間の応援の呼び方、夜の針刺しの連絡先は、日中に歩くだけでは分からない
×は担当と期限まで決める×は改善事項に必ず書き、担当と期限を決める。写真を撮るときは、患者・名札・カルテの画面が写らないようにする

病院は部署が多く、1回の巡視で全部を見るのは現実的ではありません。大事なのは、全部を毎回見ることではなく、見ていない部署を作らないことです。

よくある質問

手術室や放射線部門が無い診療所でも使えますか?

使えます。その部署・設備・作業が無い項目は、評価欄に「/(該当なし)」と書いてください。項目を足したり消したりして使ってもかまいません。

医師の働き方改革の面接指導も、このシートで確かめられますか?

このシートでは扱っていません。健康管理の「医師の面接指導」の項目は、労働安全衛生法にもとづく長時間労働者の面接指導です。医療機関に求められる医師の面接指導は、別に確かめてください。

オフィス版のチェックリストとの違いは何ですか?

オフィス版は、事務室・情報機器・共用部・健康管理の28項目です。病院版は、患者の移乗と腰痛、針刺し、空気感染、化学物質、放射線、当直など、病院で働く職員に特有のリスクを中心にした30項目です。病院の中の事務室だけを回る日は、オフィス版を使ってもかまいません。

職場巡視チェックシート(病院版)を無料で配布しています

この記事の30項目を、そのまま記入できるExcelのチェックシートにしています。記入例のシートには、病棟・放射線科・当直室を回ったときの書き方の見本を載せています。

  • 職場巡視チェックシート(病院版)
  • Excel・2シート(記入用のチェックシートと、記入例)・30項目・A4 1枚
  • ダウンロードには、会社名・お名前・メールアドレスとプライバシーポリシーへの同意が必要です

職場巡視チェックシート(病院版)をダウンロードする →

職場巡視・衛生管理の仕組みづくりを支援します

なごみ産業医事務所では、定期の職場巡視と、指摘したことが直るまでのフォローを一緒に行っています。「巡視が形だけになっている」「チェックシートをどう使えばいいか分からない」という段階のご相談も受けています。

産業医サービスについて相談する

あわせて読みたい

参考資料

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の判断は、最新の法令・院内規程を確認したうえで行ってください。

なごみ産業医事務所
■事業所名

なごみ産業医事務所

■設立

2024年11月

■代表者

白澤一弘

■所在地

〒141-0031
東京都品川区西五反田2-9-7 ドルミ五反田407号

お問い合わせ

    必須会社名・団体名

    必須部署名

    必須役職名

    必須氏名

    必須電話番号

    必須従業員数

    必須メールアドレス

     

     

    必須お問い合わせ内容

    サービスについてのご質問やご相談、またはご意見・ご要望がございましたら、 専用のお問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。
    お問い合わせはこちら