執筆・監修:白澤一弘(日本医師会認定産業医)
最終確認日:2026年8月1日
結論
産業医は、資格や月額料金だけでなく、自社の課題に合う経験、担当業務、連絡方法、健康情報の管理、面談後の意見の具体性で選びます。契約前に2~3候補と面談し、衛生委員会、職場巡視、健診後措置、長時間労働、メンタルヘルス、休職・復職、緊急相談を誰がどこまで担当するか文書で確認してください。
常時50人以上の労働者を使用する事業場では産業医の選任が必要です。選任義務が発生した企業は、期限と届出を最新の厚生労働省資料で確認します。 出典:厚生労働省「労働者数50人以上の事業場の皆様へ」
産業医を探す4つの方法
| 探し方 | 向いている企業 | 契約前の確認点 |
|---|---|---|
| 地区医師会へ相談 | 地域の医師を探したい | 紹介の有無、紹介条件、希望業務への対応 |
| 健診機関・医療機関へ相談 | 健康診断との連携を重視 | 職場巡視、委員会、メンタル面談まで担当できるか |
| 産業医紹介会社を利用 | 複数候補、複数拠点、短期間の選定が必要 | 紹介手数料、担当医の交代、運営担当者の支援範囲 |
| 産業医事務所へ直接相談 | 担当医との継続的な連携を重視 | 対応地域、得意領域、代替体制、追加料金 |
東京都医師会は、事業所所在地の地区医師会へ相談する方法を案内しています。ただし、紹介の可否や条件は地域によって異なるため、個別に確認します。 出典:東京都医師会「産業医をお探しの方へ」
探し始める前に整理する自社要件
候補へ連絡する前に、次の情報を一枚にまとめます。
- 事業場の所在地、従業員数、業種
- 本社、支店、店舗、工場など対象拠点
- 所定労働時間、夜勤、交替勤務、テレワークの有無
- 有害業務、運転、高所、重量物など安全上の特徴
- 衛生委員会、職場巡視の現状
- 健康診断後の就業判定件数
- 長時間労働者、高ストレス者の面談見込み
- メンタルヘルス不調、休職・復職の課題
- 希望する訪問頻度、曜日、オンライン対応
- 緊急相談と訪問日以外の連絡の必要性
契約前に確認する10項目
1.産業医としての要件と資格
産業医として選任できる要件を満たしているか確認します。日本医師会認定産業医などの資格は確認材料になりますが、資格名だけで実際の支援範囲は分かりません。
2.同じ業種・規模の支援経験
オフィス、製造、物流、医療、小売、ITでは、職場巡視や健康リスクが異なります。自社に近い業種・規模で、何を担当した経験があるか聞きます。
3.メンタルヘルスと休職・復職対応
面談の実施だけでなく、会社へどのような就業意見を伝えるか、主治医との連携、復職支援プラン、復職後の見直しまで確認します。
4.健康診断後の事後措置
健診結果の確認方法、就業判定、受診勧奨、意見聴取、記録の返却時期を確認します。「結果を渡して終わり」にならない運用を具体化します。
5.衛生委員会への関与
出席の有無、資料準備、議題提案、前月の課題のフォローを確認します。毎月同じ健康講話だけで終わらず、職場課題を改善できるかが重要です。
6.職場巡視の方法
産業医の定期巡視は原則として実地で行います。一定の情報提供等の条件を満たす場合に頻度を少なくとも2月に1回とできる制度がありますが、契約上の訪問頻度と法令上必要な巡視を混同しないようにします。 出典:厚生労働省「情報通信機器を用いた産業医の職務」
7.訪問日以外の相談
メール、電話、オンライン相談の可否、返信目安、緊急時の連絡先、追加料金を確認します。休職・復職や重大な健康問題は、月1回の訪問日だけでは対応しにくいことがあります。
8.健康情報の管理
面談記録、健診結果、意見書の保存場所、送受信方法、アクセス権、契約終了時の返却・削除を確認します。
9.担当医の交代・代替体制
休診、長期不在、契約終了時の代替医、引継ぎ、記録の移管を確認します。紹介会社の場合は、担当医交代の条件と費用も確認します。
10.料金に含まれる業務
月額だけを比較せず、基本料金と追加料金を分けて見積もります。
| 費用項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 基本料金 | 訪問時間、委員会、巡視、通常相談 |
| 面談 | 月内の件数、超過料金、面談記録 |
| 健診後措置 | 判定人数、データ形式、納期 |
| ストレスチェック | 実施者業務、面接指導、集団分析 |
| 休職・復職 | 面談、主治医連携、意見書、再面談 |
| 交通・出張 | 対象地域、交通費、複数拠点 |
| 緊急対応 | 時間外、臨時訪問、オンライン対応 |
| 初期設定 | 規程、運用フロー、書式整備 |
料金を公開できる場合は、サービスページに「最低料金」だけでなく、標準的な従業員数、訪問時間、含まれる業務、追加費用の発生条件を表示すると比較しやすくなります。
候補者への質問例
- 当社と同じ業種・規模では、どのような課題を支援しましたか。
- 面談後、会社へどのような形式で就業意見を伝えますか。
- 病名や面談内容を、就業上の措置へどう整理しますか。
- 職場巡視の指摘事項を翌月以降どう追跡しますか。
- 衛生委員会では、どのように議題を提案しますか。
- 訪問日以外の相談は、誰が何時間以内を目安に回答しますか。
- 休職・復職支援で主治医と連携する際、本人同意をどう扱いますか。
- 健診結果と面談記録をどこへ保存しますか。
- 担当できない業務、別料金となる業務は何ですか。
- 担当医が不在または交代する場合の体制はどうなっていますか。
契約を急がない方がよいサイン
- 産業医としての要件、担当医、業務範囲の説明が曖昧
- 衛生委員会と職場巡視への関与が契約書にない
- 面談後の就業意見が口頭だけで、記録方法が決まっていない
- 健康情報を通常メールや共有フォルダーで無制限に扱う
- 訪問日以外の連絡先と緊急時対応が決まっていない
- 追加料金、交代、解約、記録返却の条件が分からない
- 会社の業種や勤務実態を確認せず、すぐ契約だけを勧める
契約書に含めたい項目
- 業務の範囲
- 訪問頻度、時間、場所
- 報酬、交通費、追加料金
- 委員会、巡視、面談、健診後措置の成果物
- 連絡方法と対応時間
- 健康情報の保管、送信、アクセス権
- 再委託と代替医
- 守秘義務
- 契約期間、更新、解約、担当医交代
- 契約終了時の記録返却・削除
選定チェックリスト
- □ 自社の業種、人数、拠点、課題を候補者へ伝えた
- □ 2~3候補と直接面談した
- □ 担当医の資格と支援経験を確認した
- □ 衛生委員会、巡視、面談、健診後措置の担当を決めた
- □ 訪問日以外の相談と緊急時対応を確認した
- □ 健康情報の保存・送受信方法を確認した
- □ 基本料金と追加料金の境界を確認した
- □ 代替医、交代、解約、引継ぎ条件を確認した
- □ 契約開始3か月後の見直し日を決めた
よくある質問
50人未満でも産業医へ依頼できますか?
依頼できます。産業医の選任義務がない場合も、メンタルヘルス、健診後の対応、休職・復職、ストレスチェック準備など必要な業務を限定して契約できます。地域産業保健センターの無料支援を利用できる場合もあります。
オンライン対応だけでよいですか?
相談や一部面談をオンラインで行える場合がありますが、法令上実地で行う必要がある職場巡視などもあります。自社で必要な職務ごとに、対面とオンラインを分けて確認してください。
品川区・五反田以外の拠点もまとめて依頼できますか?
複数拠点対応の可否は、各拠点の所在地、人数、必要な訪問、担当医・代替医の体制で決まります。契約前に拠点一覧と必要業務を提示して確認します。
参考資料
東京・品川区で産業医をお探しの企業様へ
なごみ産業医事務所では、品川区・五反田を拠点に、産業医選任、職場巡視、衛生委員会、健診後措置、ストレスチェック、メンタルヘルス、休職・復職支援を行っています。必要な業務と現在の課題を伺い、契約範囲を整理します。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。産業医の選任・届出は、事業場の人数、業務、最新の法令・行政資料を確認してください。


