テレワークの健康管理では、従業員に運動や休憩を勧めるだけでなく、会社が労働時間・健診後の対応・作業環境・相談体制を整えることが必要です。勤務場所が自宅でも、安全衛生に関する対応がなくなるわけではありません。
人事・労務担当者は、まず下の一覧で未整備の項目と担当者を確認してください。実施頻度の例は社内運用の目安であり、法定の頻度を一律に示すものではありません。
企業が行う健康管理:担当者と確認すること
| 領域 | 人事・管理職が行うこと | 残す記録・確認の例 |
|---|---|---|
| 労働時間 | 始業・終業と時間外・休日労働を把握し、申告と客観的記録に差があれば実態を確認 | 勤怠記録、確認の経緯、業務量の調整 |
| 健康診断・事後措置 | 在宅勤務者も対象に含め、受診案内から未受診フォロー、医師への意見聴取へつなぐ | 対象者・受診状況・事後措置の管理 |
| 作業環境 | 机・椅子・画面・照明などを本人が点検し、改善に必要な支援を検討 | 自己点検票、備品・費用負担のルール |
| 相談体制 | 上司への相談と、産業医等への健康相談の窓口を分けて周知 | 窓口、利用方法、守秘範囲の案内 |
| 不調への対応 | 疲労や業務上の変化を確認し、必要に応じて面談・業務調整につなぐ | 相談経緯、調整内容、見直し日 |
| 緊急時 | 勤務中の体調急変や連絡不能時の連絡先・責任者・対応を決める | 緊急連絡手順、本人への説明 |
厚生労働省のテレワークガイドラインには、事業者用・労働者用のチェックリストと編集可能なExcelファイルがあります。導入時や勤務環境を見直す際に活用できます。
1.労働時間は「申告があるから大丈夫」で終わらせない
パソコンの使用記録なども参考に、始業・終業、休憩、時間外・休日労働の実態を確認します。ただし、パソコンの起動時間がそのまま労働時間と一致するとは限りません。申告との差があるときは、接続だけしていた時間か、未申告の業務があったのかを本人に確認します。
業務量が勤務時間内に収まらない場合、時間管理の注意喚起だけでは改善しません。納期、担当範囲、会議、時間外の連絡を見直し、調整した後の実態まで確認します。法定の面接指導の対象判定は、長時間労働者への医師面接の手順をご覧ください。
2.健診とその後の対応を在宅勤務者にも届ける
出社しない従業員への案内漏れを防ぐため、健診対象者の名簿を勤務形態と照合します。遠方の勤務者には受診できる医療機関や手続き、受診に必要な時間の扱いを事前に案内します。
受診後は、結果を受け取って終わりにせず、必要な医師の意見聴取や就業上の措置へつなげます。詳しい流れは健康診断後のフォローアップで確認できます。

3.自宅の作業環境は本人の点検から改善する
自宅は私生活の場でもあります。室内全体の写真や映像の提出を一律に求めるのではなく、作業に関係する項目の自己点検から始めます。
- 机・椅子の高さが合い、足裏や前腕を無理なく支えられるか
- 画面の文字が見やすく、反射や映り込みが強くないか
- 長時間同じ姿勢にならず、姿勢を変えられるか
- 明るさ・室温・換気を調整できるか
- 必要な休憩を取り、仕事を中断できる運用か
回答後は、備品貸与、購入費用の扱い、作業場所の変更など、会社側が何を支援できるかを返します。チェック票の回収だけで終わらせないことが大切です。
4.不調が疑われたら「変化→確認→相談→調整」で対応する
返信の遅れやミスだけで病気と決めつけず、以前と比べた変化を確認します。通信環境、育児・介護、業務の難しさなど、健康以外の要因もあり得ます。
- 事実を整理:残業増加、締切遅れ、会議への欠席など、日時と変化を記録する。
- 個別に声をかける:人前で追及せず、困っていることや業務負荷を聞く。
- 相談先を案内:必要に応じて、人事・産業医・保健師等につなぐ。
- 当面の仕事を調整:納期、担当件数、会議、連絡時間などを検討する。
- 見直す日を決める:対応後の状況を確認し、必要な支援を見直す。
上司の声かけ例
「ここ2週間、業務終了が遅くなっているようなので確認したいです。今の担当量や進め方で困っていることはありますか。調整できる仕事を一緒に整理しましょう。健康面で相談したい場合は、産業医等の窓口も利用できます。」
診断名や詳しい治療内容を上司が聞き出す必要はありません。健康情報の共有範囲を決めて運用します。孤立感などへの対応は、テレワークのメンタルヘルス対策で詳しく扱っています。
オンライン健康相談の前に決めておくこと
- 本人が周囲に聞かれず話せる場所を確保できるか
- 予約・本人確認・接続方法をどう案内するか
- 通信が途切れた場合の連絡方法は何か
- 会社に共有される情報と、共有されない情報は何か
- 面談後の意見・記録を誰が受け取り、どう管理するか
上司との1対1面談と、産業医等の健康相談は目的が異なります。「人事評価に影響するのでは」という不安が生じないよう、相談の目的と情報の扱いを説明します。
最初の1か月で整える運用例
| 時期 | 実施内容 |
|---|---|
| 1週目 | 在宅勤務者の名簿、勤怠の把握方法、健診対象者を確認する |
| 2週目 | 作業環境の自己点検票と相談窓口の案内を配布する |
| 3週目 | 回答のうち支援が必要な事項を確認し、備品・業務量・相談機会を調整する |
| 4週目 | 未対応事項を整理し、衛生委員会等で個人を特定しない形で改善を検討する |
運用後は「何人に配布したか」に加え、未受診者のフォロー状況、長時間労働への対応、相談までの待ち時間、改善事項の完了状況を確認します。健康相談の内容そのものを、成果指標として広く集計・共有する必要はありません。
従業員に案内するセルフケア
会社が環境を整えたうえで、従業員には、こまめに姿勢を変える、休憩を取る、仕事の終了時刻を意識する、困りごとを早めに相談することを案内します。体操や交流イベントへの参加は、業務負荷や本人の希望に配慮して行います。
参考資料と相談先
自社の面談・相談体制を整えたい場合は、産業医サービスの内容をご覧ください。初回オンライン相談(30分無料)で、現在の運用と必要な支援を整理します。


