長時間労働の産業医面談|月80時間の基準・案内文の例・実施の手順

執筆・監修:白澤一弘(日本医師会認定産業医)
最終確認日:2026年10月7日

産業医面談で多いのは、復職、高ストレス、長時間労働の3つです。

結論

時間外・休日労働が月80時間を超えたら、会社がやることは3つです。

  • 本人に、超えた時間を通知する
  • 産業医に、その人の氏名と超えた時間を伝える
  • 本人が申し出たら、医師の面接指導(産業医面談)を行う

面談して終わりではありません。
医師の意見を聴き、必要な措置をとり、記録を5年間保存するところまでが会社の義務です。

出典:厚生労働省「長時間労働者への医師による面接指導制度について」、労働安全衛生規則第52条の2・第52条の3・第52条の6

残業時間ごとの基準

時間外・休日労働対象会社の対応
月45時間超健康への配慮が必要と認めた人面接指導などの措置が望ましい
時間外・休日労働が月80時間超一般の労働者(管理監督者・裁量労働制の人を含む。高度プロフェッショナル制度の適用者を除く)本人に労働時間の情報を通知する(申出の有無にかかわらず義務)。産業医を選任している事業場では、産業医にも情報を提供する(義務)。疲労の蓄積が認められる人から申出があれば、面接指導を行う(義務)。申出がない人についても、面接指導等を実施するよう努める
月100時間超研究開発業務の従事者申出がなくても面接指導は義務(罰則つき)
健康管理時間が週40時間を超えた分が月100時間超高度プロフェッショナル制度の適用者申出がなくても面接指導は義務(罰則つき)

「月80時間」は、次の式で数えます。

1か月の時間外・休日労働時間 = 1か月の総労働時間 −(その月の暦日数 ÷ 7)× 40

休日労働の時間も入ります。
算定は毎月1回以上、期日(たとえば賃金の締め日)を決めて行います。

会社がやることと期限

順やることいつまでに
1時間外・休日労働時間を算定する毎月1回以上、決めた期日に
2月80時間を超えた本人に、超えた時間を通知する算定したら速やかに
3産業医に、氏名と超えた時間を伝える算定のつど
4本人から申出を受ける(書面やメールなど記録が残る形で)期日のあと遅滞なく。厚生労働省の例では期日から1か月以内
5医師の面接指導を行う申出のあと遅滞なく。厚生労働省の例では申出から1か月以内
6医師から、必要な措置について意見を聴く面接指導の結果の報告とあわせて
7必要な措置をとる意見を踏まえて
8記録を作り、保存する5年間

4と5をそれぞれ1か月かけると、長時間労働の月から面談まで2か月あきます。
通知と一緒に面談の候補日を出しておくと、この間が縮まります。

長時間労働者への産業医面談の案内文例

以下は社内で使うための架空の文例です。申出先・期限・窓口は、自社の手続きに合わせて書き換えてください。

1.本人への通知(月80時間を超えた人へ)

件名:時間外・休日労働時間のお知らせと、産業医面談のご案内

○月の時間外・休日労働時間は○時間でした。月80時間を超えたため、法令にもとづきお知らせします。
疲れがたまっていると感じる場合は、産業医による面談(面接指導)を受けられます。
希望する場合は、○月○日までに、このメールへの返信か申出書で○○(担当)へ連絡してください。
面談の候補日は ○月○日(○)○時、○月○日(○)○時 です。
面談で話した内容のうち、会社に伝わるのは就業上の措置に必要な範囲の意見です。
申し出たことを理由に、不利益な扱いをすることはありません。

2.申出がない人への声かけ

○月の時間外・休日労働時間が月80時間を超えています。
面談の申出が出ていないため、産業医から受診をお勧めするよう依頼がありました。
所要時間は○分ほどです。体調に変わりがない場合も、一度受けておくことをお勧めします。
○月○日までに、希望の日時を○○へ知らせてください。

産業医は、対象の人に申出をするよう勧めることができます(労働安全衛生規則第52条の3第4項)。
会社から言いにくいときは、産業医の名前で出します。

3.上司への連絡

○○さんは○月の時間外・休日労働時間が月80時間を超えたため、産業医面談の案内をしています。
面談の時間は勤務時間内に確保してください。
面談の内容や健康状態について、上司から本人に尋ねることは控えてください。
業務量の調整が必要になった場合は、人事から改めて相談します。

申出書に入れる項目

厚生労働省の様式例は、次の3項目です。

  • 面接指導を受ける医師(会社が指定する医師/自分が希望する医師)
  • 面接指導を受ける日時
  • 面接指導にあたって配慮を求める事項

産業医に渡す情報

項目根拠
氏名と、月80時間を超えた時間義務
作業環境、労働時間、深夜業の回数と時間数義務
直近数か月の時間外・休日労働時間の推移実務で足す
担当業務、繁忙の理由、今後の見通し実務で足す
直近の健康診断の結果、過去の面談の記録実務で足す

下の3つは法令の項目ではありません。
渡してあると、面談の時間を「何が起きているか」の確認に使わずに済みます。

面談のあとに会社がやること

医師の意見を踏まえ、必要と認めるときは措置をとります。
法令が例に挙げているのは、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少です(労働安全衛生法第66条の8第5項)。

面談の結果を理由に、本人に不利益な扱いをしてはいけません。
メンタルヘルスの不調が分かった場合は、必要に応じて精神科医などと連携します。

記録は、面接指導をした医師からの報告をそのまま保存すれば足ります。

面談で、目新しい結論が出ないこともあります。
それでも「医師の意見を聴いたうえで決めた」という形が残ります。
会社が安心して判断できる状態を作ること。私はこれが産業医面談の役目だと考えています。

産業医がいない50人未満の会社

面接指導の義務は、事業場の規模に関係なくかかります。
産業医がいない会社は、産業保健総合支援センターの地域窓口(地域産業保健センター)が行う、医師による面接指導を利用できます。

利用の条件と申込みの方法は、地域の窓口に確認してください。

産業医面談の実務チェックリスト

  • □ 時間外・休日労働時間を算定する期日を決めた
  • □ 管理監督者と裁量労働の人も、労働時間の状況を把握している
  • □ 月80時間を超えた本人への通知文を用意した
  • □ 産業医へ、氏名と超えた時間を毎月伝えている
  • □ 申出の窓口と申出書を決め、社内に知らせた
  • □ 面談の日時と場所を、勤務時間内に確保できる
  • □ 医師の意見を聴き、措置を決める担当者を決めた
  • □ 記録を5年間保存する場所を決めた

よくある質問

本人が面談を希望しない場合はどうなりますか?

一般の労働者は、時間外・休日労働が月80時間を超え、疲労の蓄積が認められる人から申出があったときに、面接指導が義務になります。月80時間を超えた本人への労働時間の通知は、申出の有無にかかわらず必要です。産業医を選任している事業場では、産業医への情報提供も必要です。申出がない人についても、面接指導等を実施するよう努めることとされています。これは国の総合対策で示されている取組で、申出があった場合の義務とは別のものです。産業医から勧めてもらう、候補日を先に示す、といった形で申出を出しやすくします。

管理職や裁量労働制の人も対象ですか?

対象です。労働時間の状況の把握は、管理監督者と裁量労働の人を含むすべての労働者(高度プロフェッショナル制度の適用者を除く)に必要です。

面談は産業医でないといけませんか?

法令上は「医師」です。厚生労働省は、産業医か、産業医の要件を備えた医師が望ましいとしています。本人が、会社の指定する医師ではなく自分の希望する医師を選ぶこともできます。

参考資料

長時間労働者の面談体制づくりを支援します

なごみ産業医事務所では、通知文と申出書の整備、面接指導、意見書の作成、措置の見直しまで支援します。
産業医がいない会社の、1回ごとの面接指導(スポット対応)もお受けしています。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としています。対象者の区分や社内の手続きは、就業規則、労使協定、個別の状況を踏まえて確認してください。

なごみ産業医事務所
■事業所名

なごみ産業医事務所

■設立

2024年11月

■代表者

白澤一弘

■所在地

〒141-0031
東京都品川区西五反田2-9-7 ドルミ五反田407号

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