70歳までの就業機会確保が企業の努力義務となり、60代以降の社員が経験を生かして働く職場が増えています。一方、高齢社員の安全と健康は、本人への注意喚起だけでは守れません。
この記事の結論
対策の中心は、年齢だけで仕事を制限することではなく、職場の危険を減らし、一人ひとりの健康・体力と業務を適合させることです。2026年4月から、高年齢者の特性に配慮した作業環境の改善や作業管理などが事業者の努力義務になりました。
「70歳雇用」と安全衛生に関する3つのルール
| 制度・ルール | 企業に求められること |
|---|---|
| 65歳までの雇用確保 | 希望者全員について、定年引上げ・継続雇用制度などの措置を講じる義務 |
| 70歳までの就業機会確保 | 定年引上げ、継続雇用、業務委託など5つの選択肢から措置を講じる努力義務。70歳定年の一律義務ではありません |
| 高年齢者の労災防止措置 | 2026年4月から、特性に配慮した作業環境の改善・作業管理などを行う努力義務 |
2024年は、雇用者全体に占める60歳以上の割合が19.1%であるのに対し、休業4日以上の労働災害による死傷者に占める割合は30.0%でした。年齢だけが原因ではありませんが、職場の設備や作業方法が高齢期の特性に合っているかを点検する必要があります。
高齢社員に起こりやすいリスクと対策
| リスク | 職場で確認すること | 対策例 |
|---|---|---|
| 転倒・墜落 | 床、段差、階段、脚立、足元の照度 | 通路の整理、滑り止め、手すり、脚立作業の削減 |
| 重量物・腰痛 | 持ち上げ重量、姿勢、作業回数 | 台車・リフター、二人作業、作業台の高さ調整 |
| 熱中症 | 暑熱環境、休憩、水分、単独作業 | WBGTの活用、休憩場所、声かけ、作業時間の変更 |
| 夜勤・疲労 | 勤務間隔、連続夜勤、回復状況 | 夜勤回数、短時間・短日勤務、休息時間の調整 |
| 持病・服薬 | 運転、高所、機械操作との適合 | 産業医等の意見、業務変更、定期的な見直し |
会社が行う対策1:職場環境を点検する
まず、年齢に関係なく全員の事故を減らす設備・環境対策から始めます。高齢社員だけに注意を求めるのではなく、危険源を職場側から取り除く考え方です。
- 通路の仮置き荷物、電源コード、床の凹凸をなくす
- 階段、倉庫、屋外との出入口の照度を確認する
- 滑りやすい場所へ滑り止めや手すりを設置する
- 重量物の上限や二人作業の基準を決める
- 暑熱作業の休憩・水分・緊急時対応を決める
会社が行う対策2:健康・体力と業務を適合させる
健康診断の所見を本人へ返すだけで終わらせず、必要に応じて産業医等の意見を聴きます。特に運転、高所、夜勤、暑熱、重量物などの業務は、健康状態との組み合わせを確認します。
体力チェックを行う場合は、目的・方法・結果の取扱いを事前に説明し、本人の尊厳とプライバシーに配慮します。年齢や測定結果だけで雇用・評価を不利に扱わず、作業改善や健康づくりに活用してください。
年齢だけで一律に判断しない:健康・体力の個人差は大きくなります。「65歳だから夜勤禁止」など年齢だけで決めず、業務リスク、本人の状態、医師の意見、実施可能な対策を総合して判断します。
会社が行う対策3:不調を言い出せる仕組みをつくる
「体力低下を伝えると契約更新に影響する」と感じれば、本人は不調を隠しやすくなります。健康相談と人事評価・再雇用の判断をできるだけ分け、相談しても直ちに不利益につながらないことを明示します。
- 産業医・保健師等への相談窓口を案内する
- 再雇用面談とは別に健康相談の機会を設ける
- 上司へは病名ではなく必要な就業上の措置を伝える
- 配慮には期間と見直し日を設定する
高齢社員の安全・健康チェックリスト
- □ 高年齢者を含めた労災発生状況と危険作業を洗い出した
- □ 転倒、墜落、重量物、暑熱、夜勤の対策を点検した
- □ 健診結果について産業医等の意見を聴く流れがある
- □ 健康・体力と業務の適合を個別に確認している
- □ 健康情報の取扱者と共有範囲を定めている
- □ 配慮内容に期限と見直し日がある
- □ 相談しても不利益にならない方針を周知している
参考資料
高齢社員が安全に働ける職場づくりを支援します
職場巡視、健診後の就業判定、個別の就業配慮、社内ルールの整備まで企業の状況に合わせて支援します。


