テレワークでは、顔色、出社時の会話、机の様子といった日常の変化が見えにくくなります。不調への気づきが遅れないよう、会社は「見えない前提」で相談と確認の仕組みを整える必要があります。
この記事の結論
一つのサインで不調と決めつけず、本人の普段との変化を複数の情報から確認します。気づいたら業務評価とは別の1対1で声をかけ、必要に応じて産業医等や相談窓口へつなぎます。勤怠・チャット等の確認は、目的を事前に説明し、必要最小限にします。
テレワークは「不調を起こす働き方」とは限らない
テレワークには、通勤負担の軽減、仕事への集中、育児・介護・治療との両立などの利点があります。一方で、仕事と生活の境界が曖昧になる、上司や同僚と話しにくい、心身の変化に周囲が気づきにくいといった課題もあります。
働き方だけを原因と決めつけず、業務量、役割の曖昧さ、孤立、家庭環境、作業環境など、複数の要因を確認します。
不調の可能性に気づく3つの情報
| 情報 | 確認する変化 | 注意点 |
|---|---|---|
| 勤怠 | 深夜・休日労働、始終業時刻の乱れ、欠勤・遅刻、長時間労働 | 入退室ログだけで労働時間を判断せず、実態を本人に確認する |
| 仕事上のコミュニケーション | 返信や報告の大きな変化、相談の減少、業務上の行き違い | 私的な会話の内容を監視せず、仕事上必要な情報に限定する |
| 1on1・会議 | 本人の訴え、集中・判断の変化、会議参加の難しさ | カメラオフだけを不調の証拠にせず、常時カメラを強制しない |
重要なのは「以前のその人との違い」です。ただし、これらは医学的な診断材料ではありません。業務上の変化を入口に、本人へ事情と支援の希望を確認するためのサインとして扱います。
過度な監視を避ける:勤怠・アクセスログなどを利用する場合は、利用目的、確認する項目、取扱者、保存期間を就業規則や社内ルールで明確にし、従業員へ事前に説明します。健康情報に該当する内容は、アクセスできる人をさらに限定します。
変化に気づいたときの5ステップ
- 事実を整理する:「最近の返信が遅い」ではなく、業務上確認できた変化を具体的に整理する
- 別枠で1対1の時間を取る:会議の冒頭やチームの前ではなく、安心して話せる場を設ける
- 決めつけずに聞く:体調、業務量、困りごと、希望する支援を確認する
- 専門窓口につなぐ:本人の状況に応じて産業医等、人事、外部相談窓口を案内する
- 業務を調整し見直す:勤務時間、優先順位、会議、出社頻度などを調整し、次回確認日を決める
声のかけ方の例
最近、深夜の業務が続いているようなので、業務量や働き方に無理がないか確認したく時間を取りました。評価のためではありません。体調や仕事で困っていること、会社に調整してほしいことはありますか。話しにくい内容は、産業医等の相談窓口へ直接相談することもできます。
会社として整える7つの仕組み
1.労働時間を客観的に把握する
自己申告だけに頼らず、PC利用記録等も参考に始業・終業、時間外・休日労働を把握します。深夜や休日の連絡を減らす「連絡しない時間帯」を設定する方法もあります。
2.1on1と相談窓口を定例化する
業務進捗だけでなく、負担や困りごとを話せる時間をつくります。頻度は一律に決めず、入社・異動直後、繁忙期、本人の状況に応じて調整します。
3.コミュニケーションの選択肢を増やす
チャット、電話、オンライン会議、対面など複数の手段を用意します。雑談を強制せず、質問・相談ができる短い場を業務時間内に設けます。
4.入社・異動直後を重点支援する
相談相手、業務手順、評価基準が分からない時期は孤立しやすいため、担当者、質問時間、オンボーディング計画を明確にします。
5.オンラインで産業医面談を受けられるようにする
相談のためだけに出社を求めず、プライバシーと通信環境を確保したオンライン面談を選べるようにします。緊急性が高い場合などは、対面受診や医療機関への接続を優先します。
6.自宅の作業環境を確認する
椅子・机、照明、室温、休憩、身体活動などをチェックリストで自己確認してもらい、必要に応じて労使で改善します。
7.管理職へラインケア研修を行う
不調を診断するのではなく、変化に気づき、話を聴き、専門窓口につなぐ役割を共有します。個人情報をチームへ広げないことも研修に含めます。
テレワークのメンタルヘルス対策チェックリスト
- □ 労働時間の把握方法と時間外労働のルールがある
- □ 勤怠・アクセスログの利用目的を説明している
- □ 定期的な1on1と相談窓口がある
- □ 入社・異動直後の支援担当を決めている
- □ オンラインの産業医面談を選択できる
- □ 自宅の作業環境を確認する仕組みがある
- □ 管理職が声かけと情報管理を学んでいる
参考資料
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