執筆・監修:白澤一弘(日本医師会認定産業医)
最終確認日:2026年10月15日
結論
- この記事は、常時50人以上の労働者を使用する事業場の職場巡視を前提にしています。衛生管理者が少なくとも毎週1回、産業医が少なくとも毎月1回(条件を満たせば少なくとも2か月に1回)巡視します
- オフィスの巡視でよく使う確認項目を、「事務室」「情報機器」「共用部」「健康管理」の4分類・28項目のチェックリストにしました。この記事に全項目を載せています
- 〇△×で迷いやすい室温・照度・トイレの数などは、下の基準値の早見表で確かめられます
- ×をつけた項目は、直す人と期限、それまでの暫定の対応まで決めて記録します
Excelのチェックシート(28項目・記入例つき)は、無料でダウンロードできます(会社名・お名前・メールアドレスの入力が必要です)。
職場巡視の頻度と義務。誰が行うか
職場巡視は、作業場を実際に歩いて、働く人の健康を損なうおそれがないかを確かめることです。書類や報告だけでは分からない、職場の実際の様子を見るために行います。
| 巡視する人 | 頻度 | 根拠 |
|---|---|---|
| 衛生管理者 | 少なくとも毎週1回 | 労働安全衛生規則 第11条第1項 |
| 産業医 | 少なくとも毎月1回。条件を満たし、事業者の同意を得た場合は、少なくとも2か月に1回 | 労働安全衛生規則 第15条第1項 |
産業医の巡視を2か月に1回にできるのは、事業者が産業医に、次の情報を毎月1回以上提供している場合です。
- 衛生管理者が行った巡視の結果
- 衛生委員会などで調査審議したうえで、事業者が産業医に提供することとした、健康障害を防ぐために必要な情報
日程が合わないことだけを理由に回数を減らすことはできません。
巡視で、働く人の健康を損なうおそれがあることが分かったときは、衛生管理者・産業医は直ちに必要な措置をとることになっています(同 第11条第1項・第15条第1項)。
50人未満の事業場では
衛生管理者・産業医の選任義務と、この巡視の義務は、常時50人以上の事業場が対象です。人数は会社全体ではなく、事業場ごとに数えます(「従業員50人で発生する6つの義務と期限」)。
常時10人以上50人未満の事業場では、業種に応じて衛生推進者または安全衛生推進者を選びます。法令上の巡視の頻度の定めはありませんが、このチェックリストは、推進者が職場を点検するときにもそのまま使えます。
職場巡視チェックリスト(オフィス版・28項目)
〇△×のつけ方
| 評価 | つけるとき |
|---|---|
| 〇 問題なし | 基準を満たし、働いている人からの困りごとも出ていない |
| △ 改善を検討 | 努力義務の目安から外れている、働いている人から不調や困りごとの声がある、今は問題ないが悪くなりそう |
| × 改善が必要 | 法令の基準を満たしていない、けがや健康障害につながる危険がある |
| 未確認・対象外 | その日に見られなかった場所、その事業場に無い設備 |
数値で決まる項目(室温・照度など)は、〇△×だけでなく測った値も書いておきます。基準を満たしていても、働いている人がつらいと言っていれば△にして理由を残します。
1. 事務室(14項目)
| 項目 | 見るところ |
|---|---|
| 文書・書籍・備品が整理整頓されている | 机の上・床・棚に物があふれていないか |
| ロッカー・棚が固定されている(地震対策) | 地震で倒れないよう、壁や床に固定されているか |
| 高いところに落下しそうな物が置かれていない | 棚の上に重い物や不安定な物が置かれていないか |
| 電気配線・コンセントが安全に管理されている | たこ足配線、ほこり、水回りの近くの配線 |
| 床の清掃が行き届いている | ごみ・汚れ・濡れた床 |
| 段差につまずき防止が施されている | 床の配線カバー、マットのめくれ |
| 机・椅子に破損やぐらつきがない | キャスター・背もたれの故障 |
| 室温が快適である(18〜28℃が目安) | 温湿度計の値と、働く人の声 |
| 照明が適切である(一般的な事務作業は300ルクス以上) | 照度計で、机の上など作業する面の明るさを測る。切れた照明がないか |
| 換気が適切である | 窓・換気設備が使えるか、空気がこもっていないか |
| 息苦しくない広さが保たれている(1人10㎥以上) | 人数に対して部屋が狭すぎないか(基準は下の「気積」) |
| 通行に支障のない通路が確保されている | 通路に荷物・段ボールが置かれていないか |
| 消火栓・消火器が緊急時に使える状態にある | 消火器の前に物が置かれていないか |
| 救急箱が常備され、所在と使い方が周知されている | 置き場所を全員が知っているか |
2. 情報機器(パソコン作業・4項目)
パソコンなどの画面を見ながら行う作業(情報機器作業)の項目です。
| 項目 | 見るところ |
|---|---|
| 画面作業時の照度が適切である | 書類やキーボードの上の明るさ |
| 機器から出る熱・騒音への対策がされている | 機器が密集した席の熱・音 |
| ディスプレイへの映り込み防止がされている | 窓や照明の映り込み、ブラインドの有無 |
| 画面の高さ・目との距離・姿勢が適切である(40cm以上) | 画面が近すぎないか、首や腰に無理がないか |
3. 共用部(6項目)
| 項目 | 見るところ |
|---|---|
| 階段・廊下に物品が置かれていない | 一時的に置いた荷物が、そのまま置きっぱなしになっていないか |
| 階段・廊下でつまずき・滑りの対策がされている | 滑り止め、手すり、照明 |
| 非常口に異常や障害物がない | 扉が開くか、扉の前に物が置かれていないか |
| 洗面所・トイレが清潔に保たれている | 清掃の状況、数が足りているか |
| 給湯室が清潔で換気も十分である | 換気扇、ごみ、においの状態 |
| ごみ処理がされていて異臭がない | ごみ置き場の状態 |
4. 健康管理(4項目)
| 項目 | 見るところ |
|---|---|
| 健康診断結果などの記録が適切に保管されている | 鍵のかかる場所で、見られる人が限られているか |
| 長時間労働への対策が講じられている | 残業の多い人の把握と、面接指導へのつなぎ方 |
| 屋内禁煙(または喫煙室の基準適合)が徹底されている | 屋内は原則禁煙。喫煙専用室などを設けている場合は基準に合っているか。会社として敷地内禁煙などにしている場合は、そのルールも守られているか |
| 受動喫煙対策が十分で、煙が流れてこない | 喫煙場所の位置、扉の開け閉め |
28項目に入っていないもの
次のものはチェックリストの28項目に入っていないため、巡視のときに別に確かめてください。
- 照明設備の点検と大掃除:どちらも6か月以内ごとに1回実施する義務があります。巡視では、前回の実施日を記録で確かめ、次の期限までに予定が入っているかを見ます
- 休養室(常時50人以上、または常時女性30人以上の事業場では男女別に必要)と休憩の設備:物置になっていないか、必要なときにすぐ使えるかを見ます
- パソコン作業の休止の取り方(下の早見表):働いている人に、実際に休止がとれているかを聞きます
倉庫や製造現場では、これに加えて、機械の安全装置、化学物質の保管とラベル表示、保護具、重量物の運搬、暑さ対策などを見ます。業種によって見る項目が大きく変わるため、この記事ではオフィスに絞っています。
迷いやすい項目の基準値(早見表)
〇△×で迷ったときや、改善の必要を会社に説明するときに使ってください。「義務」と「努力義務」を分けています。
空気と明るさ(事務所衛生基準規則)
| 項目 | 基準 | 義務/努力義務 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 室温(空調設備がある場合) | 18℃以上28℃以下 | 努力義務 | 事務所衛生基準規則 第5条第3項 |
| 室温が10℃以下のとき | 暖房などの措置をとる | 義務 | 同 第4条第1項 |
| 湿度(空調設備がある場合) | 40%以上70%以下 | 努力義務 | 同 第5条第3項 |
| 換気 | 直接外気に向かって開けられる部分の面積が、床面積の20分の1以上。これが無い場合は、十分な性能の換気設備 | 義務 | 同 第3条第1項 |
| 照度(一般的な事務作業) | 300ルクス以上 | 義務 | 同 第10条第1項 |
| 照度(付随的な事務作業) | 150ルクス以上 | 義務 | 同 第10条第1項 |
| 照明設備の点検 | 6か月以内ごとに1回 | 義務 | 同 第10条第3項 |
| 気積(部屋の空間の大きさ) | 1人あたり10㎥以上(設備の容積と、床から4mを超える高さの部分を除いて計算) | 義務 | 同 第2条第1項 |
室温の下限は、2022年3月に公布され同年4月1日に施行された改正で、17℃から18℃に変わりました。照度の基準は、2021年12月に公布され2022年12月1日に施行された改正で、「一般的な事務作業300ルクス以上」「付随的な事務作業150ルクス以上」の2区分になりました。古い資料のまま運用していないか、一度確かめてみてください。
パソコン作業(情報機器作業ガイドライン)
照度の基準(300ルクス以上)は、上の事務所衛生基準規則の義務です。それ以外の次の目安は、厚生労働省の「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」によるもので、罰則のある義務ではありません。ただし、産業医が改善をお願いするときの根拠になります。
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 画面と目の距離 | おおむね40cm以上 |
| 画面の高さ | 画面の上端が目の高さとほぼ同じか、やや下 |
| 書類・キーボード面の明るさ | 300ルクス以上 |
| 作業の休止 | 連続作業は1時間を超えないようにし、次の連続作業までに10〜15分の作業休止。連続作業の途中にも1〜2回、1〜2分程度の小休止 |
作業休止は、情報機器作業をいったん止めて、画面を見続ける・キーを打ち続ける・同じ姿勢を続けることによる負担を軽くするための時間です。休憩でなくてもよく、ほかの業務をしてもかまいません。ただし、パソコンからタブレットに持ち替えて画面を見続けるような作業は、休止になりません。
共用設備(事務所衛生基準規則)
| 項目 | 基準 | 義務/努力義務 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| トイレ(男性用大便所) | 同時に働く男性60人以内ごとに1個以上 | 義務 | 事務所衛生基準規則 第17条第1項 |
| トイレ(男性用小便所) | 同時に働く男性30人以内ごとに1個以上 | 義務 | 同 第17条第1項 |
| トイレ(女性用) | 同時に働く女性20人以内ごとに1個以上 | 義務 | 同 第17条第1項 |
| 独立個室型のトイレ(特例) | 同時に働く人が常時10人以内であれば、男女共用の独立個室型のトイレを設けることで、上の男女別の基準によらなくてもよい | 第17条第1項の特例 | 同 第17条の2 |
| 休憩の設備 | 設けるよう努める | 努力義務 | 同 第19条 |
| 休養室(横になれる場所) | 常時50人以上、または常時女性30人以上なら、男女別に設ける | 義務 | 同 第21条 |
| 清掃 | 日常の清掃に加え、6か月以内ごとに1回の大掃除。ねずみ・昆虫の調査も6か月以内ごとに1回 | 義務 | 同 第15条 |
| 救急用具 | 手当てに必要な用具・材料を備え、清潔に保つ(中身の品目は法令で決まっていない) | 義務 | 同 第23条 |
トイレの数は、会社全体の人数ではなく、同時に働いている男性・女性の人数で計算します。「〇人以内ごとに1個」なので、端数が出たら1個として数えます(たとえば同時に働く女性が21人なら、女性用は2個以上)。
独立個室型のトイレは、四方を壁などで囲まれ、外から見えず音も漏れにくい構造で、内側から鍵をかけられる1つの部屋になっているトイレのことです。ふつうの仕切りの個室とは違います。また、この特例は、すでにある男女別のトイレを減らす理由にはなりません。
巡視記録の書き方(記入例)
チェックリストの〇△×に加えて、×や△をつけた項目は、次のように記録します。日付・場所・数値は、説明のための架空の例です。
巡視日:2026年11月5日(木)10:00〜10:40 / 巡視者:衛生管理者(人事総務部)・産業医
場所:3階 営業部の島
評価:×(照明が適切である)
測った値:窓から遠い列の机の上で 240ルクス(照度計で机の上を測定)
指摘:窓から遠い列の照明が1本切れている。一般的な事務作業の基準(300ルクス以上)を下回る
暫定の対応:当日中に、空いている席への移動を案内
直す人・期限:総務課・11月7日までに照明を交換
再確認日:11月12日の巡視で照度を測り直す → 320ルクス。まぶしさや明るさのむらがなく、席の人からも「見やすくなった」と確認できたので〇
次の巡視では、前回の×と△から先に見ます。直っていれば〇に変えて完了です。
直っていない場合は、期限をそのまま延ばすのではなく、まず危険が残っていないかを確かめます。けがや健康障害につながるおそれがあれば、使用や作業を止める、責任者に報告するなどの対応を先にとります。
巡視記録そのものの保存期間は、法令では決まっていません。衛生委員会の議事録(3年保存)に合わせて、3年保存にしておくと扱いやすくなります。巡視の結果は衛生委員会で報告し、全体で共有してください。
巡視を形だけにしない3つのコツ
| 段階 | やること |
|---|---|
| 巡視の前 | 残業の多い部署、健診の結果、前回の指摘、レイアウトの変更を確かめて、回るルートを決める |
| 巡視の当日 | 設備だけでなく、働いている人に「困っていること」を短く聞く |
| 巡視のあと | 指摘を「すぐ直す」「期限を決めて直す」「様子を見る」に分け、直す人と完了の予定日を決める |
当日、働いている人に一言聞くだけで、見えるものが変わります。「午後になると西日で画面が見えない」「この通路は台車がすれ違えない」といったことは、設備を眺めているだけでは気づきにくいものです。
毎週の衛生管理者の巡視で、毎回28項目すべてを細かく見るのが難しいこともあります。その場合も、前回の×と△は必ず見る、季節の重点(夏は暑さ、冬は換気と乾燥など)を決める、しばらく見ていない場所を記録で把握して順に回る、といった形で、見ていない場所を作らないようにしてください。
在宅勤務の人がいる場合
在宅で働く人の自宅は、会社の作業場と同じ方法で巡視するのが難しい場所です。代わりに、作業場所の自己点検票(机と椅子の高さ、画面との距離、照明、休憩の取り方など)を本人に書いてもらい、気になる回答があれば面談で確かめる、という組み合わせが現実的です。
厚生労働省の「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」には、自宅の作業環境を確かめるためのチェックリストが付いています。進め方は「テレワークの健康管理|人事・労務が行う対策とチェックリスト」にもまとめています。
よくある質問
産業医の巡視は、毎月必ず来てもらわないといけませんか?
原則は少なくとも毎月1回です。事業者が毎月1回以上、衛生管理者の巡視の結果と、衛生委員会などで調査審議したうえで提供することとした情報を産業医に提供し、産業医が事業者の同意を得ている場合に限り、少なくとも2か月に1回にできます(労働安全衛生規則 第15条第1項)。
チェックリストの項目は、法令で決まっていますか?
決まっていません。この28項目は、オフィスでよく確かめる項目をまとめたものです。事業場によってリスクは違うので、業種や設備に合わせて項目を足してください。
チェックシートは自社で作り直してもいいですか?
構いません。配布しているExcelは、項目を足したり消したりして使えます。オフィス以外の作業場がある会社は、業種に合わせて項目を足してください。
職場巡視チェックシート(Excelテンプレート)を無料で配布しています
この記事の28項目を、そのまま記入できるExcelのチェックシートにしています。判断に迷う項目は「照度300ルクス以上」のように基準値をシートの中に書いてあるので、早見表を探さずに〇△×をつけられます。
- 職場巡視チェックシート(オフィス版)
- Excel・2シート(記入用のチェックシートと、記入例)・28項目
- ダウンロードには、会社名・お名前・メールアドレスとプライバシーポリシーへの同意が必要です
職場巡視・衛生管理の仕組みづくりを支援します
なごみ産業医事務所では、毎月の職場巡視と、指摘したことが直るまでのフォローを一緒に行っています。「巡視が形だけになっている」「チェックシートをどう使えばいいか分からない」という段階のご相談も受けています。
あわせて読みたい
参考資料
- e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」(第11条・第15条・第23条)
- e-Gov法令検索「事務所衛生基準規則」
- 厚生労働省「事務所における労働衛生対策」
- 厚生労働省 照度等の改正(2021年12月公布)の施行通達
- 厚生労働省 室温の改正(2022年3月公布)の施行通達
- 厚生労働省「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」(改正後全文)
- 厚生労働省「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の判断は、最新の法令・社内規程を確認したうえで行ってください。


