従業員50人で発生する6つの義務と期限|産業医選任・届出の準備

この記事のポイント

  • 従業員数は原則として事業場単位で確認する
  • 50人到達前に産業医・衛生管理者・衛生委員会等の準備を始める
  • 選任・届出だけでなく、継続的に運用できる体制を作る

実務上の注意:正社員だけでなく、常時使用する労働者の範囲を確認します。派遣労働者などは義務ごとに数え方が異なるため注意してください。

常時使用する労働者が50人以上になると、産業医や衛生管理者の選任など、労働安全衛生法上の対応が一気に増えます。基準は会社全体ではなく、原則として事業場単位で判断します。50人に達してから慌てないよう、見込みが立った段階で準備を始めましょう。

50人以上で必要になる主な6つの対応(全業種共通)

  1. 産業医の選任
  2. 衛生管理者の選任
  3. 衛生委員会の設置・毎月の開催
  4. ストレスチェックの実施
  5. 定期健康診断結果報告書の提出
  6. 休養室・休養所の確保

このほか、業種によっては安全管理者の選任と安全委員会の設置も必要です。

1.産業医を選任する

常時50人以上の労働者を使用する事業場は、選任すべき事由が発生した日から14日以内に産業医を選任し、選任後は遅滞なく所轄の労働基準監督署へ報告します。期限が「14日以内」と定められているのは選任で、報告は「遅滞なく」です。産業医は、健康診断後の意見、長時間労働者や高ストレス者への面接指導、職場巡視、衛生委員会での助言などを行います。

1,000人以上の事業場、または一定の有害業務に常時500人以上が従事する事業場では、専属産業医が必要です。3,001人以上の事業場では2人以上を選任します。

2.衛生管理者を選任する

衛生管理者も、選任すべき事由が発生した日から14日以内に選任し、選任後は遅滞なく労働基準監督署へ報告します。必要な資格は業種によって異なります。主な業務は、週1回以上の職場巡視、作業環境や設備の点検、健康管理に関する実務です。

3.衛生委員会を設置する

衛生委員会は毎月1回以上開催し、健康障害防止、健康保持増進、労働災害の原因と再発防止などを調査審議します。議事の概要は従業員へ周知し、重要な記録は3年間保存します。

4.ストレスチェックを実施する

年1回、対象となる従業員へ受検の機会を提供します。個人結果は本人へ直接通知し、本人の同意なく事業者が取得してはいけません。高ストレス者から申出があった場合は、医師による面接指導につなげます。実施後は、所定の様式で労働基準監督署へ報告します。

関連記事:【2028年4月義務化】50人未満の事業場が始めるストレスチェック準備

5.定期健康診断結果を報告する

常時50人以上の労働者を使用する事業場は、定期健康診断を実施したとき、結果報告書を遅滞なく所轄の労働基準監督署へ提出します。「毎年6月30日まで」という一律の期限ではない点に注意してください。

なお、2025年1月1日から、産業医・衛生管理者等の選任報告、定期健康診断結果報告、ストレスチェック結果報告などは、原則として電子申請が義務づけられています。書面での提出を前提にしている場合は、e-Govでの手続きに切り替える準備が必要です。

6.休養室・休養所を確保する

常時50人以上、または常時30人以上の女性労働者を使用する事業場は、労働者が横になれる休養室または休養所を、男性用と女性用に区別して設けなければなりません。人数そのものが基準になる義務ですが、産業医や衛生管理者に比べて見落とされやすい項目です。

ただし、専用の部屋を常に2室空けておく必要まではありません。行政解釈では、専用設備として設けなくても、随時利用できる機能を確保すれば足りるとされています。会議室などを必要なときに使える形にしておき、入口からの目隠しなど、横になっても人目に触れない配慮をあわせて整えます。

業種によって必要になるもの|安全管理者・安全委員会

ここまでの6つは全業種に共通する対応です。業種によっては、50人到達時に次の対応も必要になります。

安全管理者の選任

林業、鉱業、建設業、運送業、清掃業、製造業(物の加工業を含む)、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゅう器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・じゅう器等小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備業、機械修理業では、常時50人以上で安全管理者を選任します。産業医や衛生管理者と同じく、選任は14日以内、報告は遅滞なくです。

安全委員会の設置

林業、鉱業、建設業や、製造業の一部(木材・木製品製造業、化学工業、鉄鋼業、金属製品製造業、輸送用機械器具製造業)などでは、常時50人以上で安全委員会の設置が必要です。その他の製造業・運送業や、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業などは100人以上が基準です。衛生委員会は業種を問わず50人以上で必要になります。

安全委員会と衛生委員会の両方を設けなければならない事業場では、それぞれの委員会に代えて、安全衛生委員会としてまとめて設置することができます。

自社の業種がどれに当たるか判断に迷う場合は、所轄の労働基準監督署へ確認してください。

50人到達前後の準備スケジュール

到達が見込まれる1〜3か月前

  • 事業場ごとの常時使用労働者数を確認する
  • 産業医候補と衛生管理者候補を決める
  • 衛生委員会の構成と年間予定を作る
  • ストレスチェックの実施方法と委託先を検討する

50人に到達した後

  • 産業医・衛生管理者を期限内に選任し、報告する
  • 衛生委員会を毎月開催する
  • 健康診断結果について医師の意見を聴き、必要な就業上の措置を行う
  • ストレスチェックの年間計画を実行する

従業員50人の壁:人数の数え方

50人の基準は、原則として法人全体の従業員数ではなく、支店・店舗・工場などの事業場単位で確認します。正社員だけを数えるものではなく、常態として使用する労働者は雇用形態だけで一律に除外できません。

確認する項目実務上のポイント
判定単位会社全体ではなく、原則として事業場ごとに確認します。
正社員その事業場で常時使用している労働者として数えます。
パート・アルバイト・契約社員名称や所定労働時間だけで除外せず、雇用の継続性や勤務実態を確認します。
派遣労働者義務の種類により派遣元・派遣先での扱いが異なるため、個別に整理します。
人数が増減する場合一時点だけで判断せず、雇用実態と今後の継続性を確認します。
人数の算定や派遣労働者の扱いは義務ごとに異なる場合があります。判断に迷う場合は、所轄の労働基準監督署や専門家へ確認してください。

50人到達前の実務チェックリスト

  • 事業場ごとの従業員名簿を作り、雇用形態・勤務場所・雇用期間を整理する
  • 50人に到達する見込み時期を採用計画とあわせて毎月確認する
  • 産業医・衛生管理者の候補者と契約・選任までの期間を確認する
  • 衛生委員会のメンバー、年間日程、議題、議事録の保存方法を決める
  • ストレスチェックと健康診断結果報告の担当者・委託先を決める

従業員50人以上についてよくある質問

会社全体で50人を超えたら対象ですか?

原則は事業場単位です。本社30人、支店25人のように分かれている場合、単純に合計55人だから直ちに各事業場が対象になるとは限りません。場所・組織・労務管理の独立性を含めて確認します。

パートや契約社員も50人に含まれますか?

常態として使用している場合は、正社員以外も対象人数に含まれ得ます。名称だけで除外せず、雇用期間や勤務実態を確認してください。

一時的に50人を下回った場合はどうしますか?

一時的な増減だけで運用を止めず、雇用実態と今後の見込みを確認します。継続的に基準を下回る場合を含め、個別判断が必要なときは所轄の労働基準監督署へ相談しましょう。

50人到達前から産業医を探す場合は、産業医サービスの内容と、産業医の探し方・選び方もご覧ください。

早めに産業保健体制を整えましょう

50人到達時の対応は、産業医契約だけでは完了しません。衛生管理者、衛生委員会、健康診断後の措置、ストレスチェックを一つの年間運用として設計すると、抜け漏れを防ぎやすくなります。

50人到達前の準備を無相談する

産業保健の仕組みづくりを支援します

なごみ産業医事務所では、法令対応だけでなく、企業の状況に合わせた実務運用まで一緒に整えます。

なごみ産業医事務所
■事業所名

なごみ産業医事務所

■設立

2024年11月

■代表者

白澤一弘

■所在地

〒141-0031
東京都品川区西五反田2-9-7 ドルミ五反田407号

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