従業員の病名、診断書、健康診断結果、ストレスチェック結果などは、会社が慎重に扱うべき情報です。一方で、安全に働くために上司へ一定の情報を伝えなければ、必要な配慮を実施できません。
共有の基本原則
上司へは病名や検査値ではなく、必要な就業上の措置を、必要な範囲で伝えます。本人に利用目的と共有範囲を説明し、社内の取扱規程に沿って、アクセスできる人を限定します。
社内共有は「第三者提供」ではないが、自由に広めてよいわけではない
個人情報保護委員会の見解では、同じ事業者内の別部門への提供は、個人情報保護法上の「第三者提供」には当たりません。ただし、健康情報の多くは「要配慮個人情報」に該当し、会社は利用目的を明確にしたうえで、健康確保や安全配慮に必要な範囲で取り扱う必要があります。
つまり、「社内だから誰に伝えてもよい」のではありません。人事、産業保健スタッフ、直属上司など、役割上必要な人だけが扱える状態にします。
上司へ伝えるのは「病名」より「働き方」
| 原則として共有しない情報 | 必要に応じて共有する情報 |
|---|---|
| 具体的な病名・診断名 | 残業を避ける、夜勤を外す |
| 検査値・健診結果の詳細 | 重量物を扱わない |
| 服薬名や治療の詳細 | 通院のため勤務時間を調整する |
| 本人が語った私生活の事情 | 緊急時の対応・連絡先 |
| ストレスチェックの個人結果 | 配慮の期間と見直し日 |
本人への説明が大切です。「誰に」「何のために」「どの情報を」伝えるかを事前に説明します。情報の取得経路や制度によっては、本人の同意が必要になります。緊急時などの例外を除き、迷う場合は産業医等や専門家に確認してください。
実務で迷いやすい3つの場面
場面1:メンタルヘルス不調で休職する
上司には「療養のため○月○日から休職する」「連絡窓口は人事に一本化する」「本人への業務連絡は控える」と伝えれば、通常は管理上の目的を果たせます。本人の同意なく、診断名や不調の背景を職場へ広げる必要はありません。
場面2:健康診断で就業制限が必要になった
上司には「1か月間は残業を避ける」「高所作業から外す」など、産業医等が整理した就業上の措置を伝えます。検査値や病名そのものを共有しなくても、勤務管理は可能です。
場面3:ストレスチェックで高ストレスと判定された
ストレスチェックの個人結果は、本人の同意なく事業者へ提供できません。面接指導の申出があった場合も、上司へ伝える内容は、勤務時間の短縮や配置上の配慮など就業上必要な事項に整理します。
会社で整えたい5つのルール
- 利用目的を決める:健康確保、適正配置、休復職支援など目的を明文化する
- 情報を分類する:本人の同意が必要な情報、法令上取得する情報、加工して共有する情報を分ける
- 取扱者を限定する:人事、産業医、保健師、必要な管理監督者など役割を定める
- 共有手順を決める:原則として産業医等が就業上の措置へ加工して伝える
- 保管・廃棄を分ける:人事評価資料とは分離し、アクセス権限、保存期間、廃棄方法を定める
上司への伝え方の例
○○さんについて、健康上の理由から、○月○日まで時間外労働を避ける必要があります。病名や治療内容は共有しません。業務量の調整は人事と相談し、○月○日に産業医面談の結果を踏まえて見直します。本人への体調確認は人事窓口を通してください。
情報を減らすことが、適切な配慮を実行しやすくする
病名を詳しく知るほど適切に対応できるとは限りません。上司が必要としているのは、何を避け、何を調整し、いつ見直すかという実務情報です。必要最小限に整理することで、本人のプライバシーと会社の安全配慮を両立できます。
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参考資料
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