執筆・監修:白澤一弘(日本医師会認定産業医)
最終確認日:2026年10月15日
結論
この記事は、会社が行う一般健康診断を前提にしています。雇入時の健康診断(雇い入れるとき)、定期健康診断(1年以内ごとに1回)、特定業務従事者の健康診断(深夜業などの業務への配置替えのときと、6か月以内ごとに1回)です。有害な業務についての特殊健康診断には、別の決まりがあります。
- 健康診断の事後措置は、健康診断を受けさせたあとに会社がする一連の対応です。受けさせただけでは終わりません
- 中心になるのは、異常の所見がある人について医師の意見を聴き(定期健康診断などは実施した日から3か月以内。下の表)、その意見を勘案して、必要と認めるときは就業上の措置を講じることです
- 医師が出す就業についての判断(就業判定)は、通常勤務・就業制限・要休業の区分で示されることが多く、健診機関の「要再検査」「要治療」などの判定とは別のものです
- 意見聴取の期限は、措置を待ってよい期間ではありません。必要な措置や受診のすすめは、期限を待たずに進めます
健康診断の事後措置とは
事後措置は、健康診断の結果をもとに、働く人の健康を守るために会社が行う対応の全体を指します。法律で決まっているものと、努力義務のものがあります。
| 対応 | 期限・内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 本人への通知 | 健康診断を受けた全員に、結果を遅滞なく通知する(会社の義務) | 労働安全衛生法 第66条の6、同規則 第51条の4 |
| 結果の記録 | 健康診断個人票(法定の様式)を作り、5年間保存する | 同規則 第51条 |
| 医師の意見聴取 | 異常の所見がある人について、医師の意見を聴き、個人票に記載する。期限は下の表 | 同法 第66条の4、同規則 第51条の2 |
| 就業上の措置 | 医師の意見を勘案し、必要と認めるときは、就業場所の変更・作業の転換・労働時間の短縮・深夜業の回数の減少などの措置を講じる。作業環境の測定や施設・設備の整備、医師の意見の衛生委員会への報告なども含まれる | 同法 第66条の5 |
| 保健指導 | 特に健康の保持に努める必要があると認める人に、医師や保健師による保健指導を行うよう努める | 同法 第66条の7(努力義務) |
| 労働基準監督署への報告 | 常時50人以上の事業場は、定期健康診断と、特定業務従事者の健康診断(定期のもの)の結果を、遅滞なく報告する。2025年1月1日から電子申請が原則 | 同規則 第52条 |
雇入時の健康診断は、労働基準監督署への結果報告の対象ではありません。また、一部の健康診断(有害な業務に従事する人の定期の歯科健康診断や、特殊健康診断の一部)は、人数にかかわらず報告が必要です。
医師の意見聴取の期限
| 健康診断 | 意見聴取の期限 |
|---|---|
| 雇入時・定期・特定業務従事者の健康診断など | 健康診断を実施した日から3か月以内 |
| 本人が別の医療機関で受けた健康診断の結果を提出した場合(法第66条第5項ただし書) | 結果を証明する書面が提出された日から3か月以内 |
| 深夜業に従事する人(従事した回数などの要件あり)が自分で受けた健康診断の結果を提出した場合(自発的健康診断・法第66条の2) | 提出された日から2か月以内 |
就業判定とは
就業判定は、健康診断の結果をもとに、その人が今の仕事を続けてよいか、配慮が要るかを医師が判断することです。法律が会社に求めているのは「医師の意見を聴くこと」で、その意見の中身が就業判定です。
健診機関の判定との違い
健診機関の結果表にある「要再検査」「要精密検査」「要治療」などは、医学的に次に何をすべきか(受診や検査)を示すものです。就業判定は、それとは別に、仕事をどうするかを示します。
たとえば「要治療」の人でも、通院しながら通常どおり働ける場合は「通常勤務」になります。一方、同じ検査の値でも、運転や高所作業をする人では、就業の制限が必要になることがあります。
就業区分
厚生労働省の「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」では、次の区分が例として示されています。
| 就業区分 | 意味 | 就業上の措置の例 |
|---|---|---|
| 通常勤務 | 通常の勤務でよい | 就業上の措置は不要(受診のすすめや保健指導が必要な場合はある) |
| 就業制限 | 勤務に制限を加える必要がある | 労働時間の短縮、出張の制限、時間外労働の制限、労働負荷の制限、作業の転換、就業場所の変更、深夜業の回数の減少、昼間勤務への転換など |
| 要休業 | 勤務を休む必要がある | 療養のため、休暇や休職などで一定期間勤務させない |
誰に意見を聴くか
指針では、産業医の選任義務がある事業場では産業医から、選任義務がない事業場では、労働者の健康管理について必要な医学的知識を持つ医師から意見を聴くことが適当とされています。産業医以外の医師に意見を求めることもできますが、常時50人以上の事業場では、それで産業医の選任義務がなくなるわけではありません。
産業医の選任義務は、会社全体ではなく事業場ごとの人数で判断します。人数の数え方は「従業員50人の義務と数え方」にまとめています。
医師に渡す情報
就業判定は、検査の値だけでは決まりません。意見を求めるときは、仕事の内容(運転・高所作業・夜勤・重量物の有無など)、労働時間(時間外労働の状況)、前回の健康診断の結果とそのときの措置などを伝えます。
医師から、意見を述べるために必要な仕事の情報を求められたときは、会社は速やかに提供しなければなりません(労働安全衛生規則 第51条の2第3項)。
情報が足りないとき
情報が足りず、すぐに判断できないときは、医師が本人と面談したり、精密検査の結果を確かめたりしてから意見を出すことがあります(この状態を「判定保留」と呼ぶことがあります)。ただし、保留は指針の区分の一つではなく、意見聴取の期限が延びるわけではありません。期限内に意見を聴けるよう段取りを組み、そのあいだも、医師の意見を聴いて必要な暫定の措置を検討します。
判定の記録
健康診断個人票には、「医師の意見」と、「意見を述べた医師の氏名」を書く欄があります。健康診断を行った医師と、就業上の意見を述べた医師は、別の人になることがあります。医師の押印は不要です。
事後措置の流れ
次の順番で進めますが、それぞれに独立した期限があり、並行して進めるものもあります。たとえば、受診のすすめは結果が届いた時点から始め、措置を決めるのを待ちません。
| やること | いつ | 担当 |
|---|---|---|
| 結果を受け取り、受けた全員に通知する | 結果が届いたら遅滞なく | 会社(健診機関に送付を委ねる場合も、責任は会社) |
| 再検査・治療が必要な人に受診をすすめ、受診したかを確かめる | 結果が届いたら | 人事・産業医など |
| 異常の所見がある人について医師に意見を求める(仕事の情報を添える) | 意見聴取の期限内(上の表) | 人事 → 産業医など |
| 医師が就業判定を行い、意見を出す(必要なら本人と面談) | 同上 | 産業医など |
| 本人の意見を聴き、会社として就業上の措置を決めて実施する | 意見を受けたら速やかに | 人事・所属長 |
| 保健指導を行う(特に健康の保持に努める必要がある人。努力義務) | 適宜 | 医師・保健師 |
| 医師の意見と措置を記録する | 随時 | 人事 |
| 労働基準監督署に結果を報告する(50人以上の事業場) | 遅滞なく | 人事 |
| 措置を見直す(延長・変更・解除) | 決めた見直しの日 | 医師の意見を聴いて会社が判断 |
措置を決めるときの注意
指針では、就業上の措置を決めるときは、あらかじめ本人の意見を聴き、十分な話し合いを通じて、本人の了解が得られるよう努めることとされています。また、
- 健康の保持に必要な範囲を超えた措置をとらない
- 医師の意見を聴かずに措置を決めない
- 医師の意見から著しく離れた措置をとらない
ことにも注意します。措置を解除したり変えたりするときも、日付が来たから自動的に戻すのではなく、医師の意見を聴いて判断します。
医師の意見書の読み方と、会社がどこまで従う必要があるかは「産業医の意見書とは」で説明しています。
受診のすすめと、就業上の措置
再検査や治療をすすめることと、残業の制限・作業の転換などの就業上の措置は、判断する内容が違います。
- 受診のすすめ:健診機関で「要精密検査」「要治療」とされた人などに、医療機関の受診をすすめる。受診したかを確かめ、記録に残す
- 就業上の措置:仕事を続けることで健康が悪くなるおそれがあるときに、働き方を変える
両者は切り離されたものではありません。再検査や治療の結果は、就業上の措置を判断するときの大事な材料になります。ただ、病名や検査の値だけで会社が独自に就業を制限するのは避け、仕事の情報を医師に伝えて意見を確認してから決めます。
上司へ伝える情報は必要最小限に
所属長には、「時間外労働を月○時間まで」「重量物の作業を避ける」「○月に見直し」など、仕事の管理に必要な内容だけを伝えます。病名や検査の値をそのまま伝える必要は通常ありません。健康情報をどこまで共有できるかは「従業員の健康情報はどこまで共有できる?」にまとめています。
50人未満の事業場では
常時50人未満の事業場でも、健康診断の実施、受けた人全員への結果の通知、記録、異常の所見がある人についての医師の意見聴取と就業上の措置は、同じように必要です。
産業医がいない場合の相談先として、地域産業保健センターは、小規模の事業場が健康診断の結果についての意見聴取などを無料で依頼できる窓口です(事前の申し込みが必要です)。
よくある質問
従業員が再検査を受けない場合はどうしますか?
強い言葉で一律に迫るのではなく、案内した日と本人の意向を記録します。健康へのリスクを説明し、受診しやすいよう勤務時間の調整なども検討します。就業上のリスクが疑われる場合は、受診の有無とは別に、医師に相談して就業上の措置を検討します。
再検査の費用は会社が負担しないといけませんか?
一般健康診断のあとの再検査や精密検査の費用を、会社が負担しなければならないとは法令で一律に決まっていません。費用の扱いは、労使で話し合って決めることが望ましいでしょう。なお、法令で再検査などが義務付けられている特殊健康診断は別です。また、定期健康診断などで脳・心臓疾患に関わる項目に所見があった人は、要件を満たせば、労災保険の「二次健康診断等給付」で、自己負担なく二次健康診断を受けられる制度があります。
意見聴取は、全員分を医師に見てもらう必要がありますか?
法律で意見聴取が求められているのは、健康診断の項目に異常の所見があると診断された人です。「要精密検査」「要治療」の表示がある人に限られるわけではないので、所見の有無は医師と確認します。法律上の義務ではありませんが、所見がない人も含めて医師が結果に目を通しておくと、次の年の経過を追いやすくなります。
参考資料
- 厚生労働省「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」(平成29年改正の通知・改正後の指針)
- e-Gov法令検索「労働安全衛生法」(第66条の4〜第66条の7)
- e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」(第51条〜第52条)
- 厚生労働省「主要様式ダウンロードコーナー(安全衛生関係)」
- 厚生労働省「二次健康診断等給付」
- 労働者健康安全機構「地域窓口(地域産業保健センター)」
健康診断のあとの対応を支援します
なごみ産業医事務所では、健康診断の結果の確認と就業判定、意見書の作成、受診のすすめのフォロー、保健指導まで支援しています。産業医がいない事業場や、健康診断のあとの意見だけ欲しい場合は、スポット面談(意見書つき)もお受けしています。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の就業判定・措置は、医師の意見と社内規程を踏まえて行ってください。


