従業員50人で発生する6つの義務と期限|産業医選任・届出の準備

常時使用する労働者が50人以上になると、産業医や衛生管理者の選任など、労働安全衛生法上の対応が一気に増えます。基準は会社全体ではなく、原則として事業場単位で判断します。50人に達してから慌てないよう、見込みが立った段階で準備を始めましょう。

50人以上で必要になる主な6つの対応(全業種共通)

  1. 産業医の選任
  2. 衛生管理者の選任
  3. 衛生委員会の設置・毎月の開催
  4. ストレスチェックの実施
  5. 定期健康診断結果報告書の提出
  6. 休養室・休養所の確保

このほか、業種によっては安全管理者の選任と安全委員会の設置も必要です。

産業医と人事担当者が事業場の環境と産業保健体制を確認するイラスト
イメージイラスト人数は事業場ごとに確認し、必要な産業保健体制を整えます。

50人の数え方:パート・派遣を含めて事業場ごとに確認

産業医・衛生管理者の選任や委員会設置のための事業場規模は、日雇いやパート等も含め、常態として使用している人数で判断します。正社員の人数だけでも、フルタイム換算の人数でもありません。派遣中の労働者は、派遣元・派遣先の双方で規模の算定に含めます。

根拠:厚生労働省「常時使用する労働者の数」の数え方。個々の健診・ストレスチェックの受検対象者の範囲と、事業場規模を判定する人数は別に確認します。

例(いずれも常態として勤務している前提)規模判定の考え方
同じ事業場で正社員40人+パート8人+受入派遣5人合計53人。産業医・衛生管理者・衛生委員会等の体制を確認する
本社30人・別の独立した支店25人会社全体の55人を各事業場へ単純適用しない。事業場の独立性を確認して判定する
週の出勤日が異なるパートを含む同じ時刻に出勤している人数だけを数えるものではない。常態として使用する人数を確認する
採用や退職で一時的に50人を前後する単日の人数だけで決めず、通常の使用実態と継続性を確認する

事業場の区分や出向者などの扱いに迷う場合は、所在地・組織図・雇用関係・勤務実態の資料を用意して所轄労働基準監督署へ確認します。

人事が作る人数確認表

事業場名/所在地/正社員数/パート・契約社員等の数/派遣労働者数/合計/通常の勤務実態/確認日/次回の採用予定を一枚にまとめます。採用計画と照合して、選任候補を探す時期を決めてください。

1.産業医を選任する

常時50人以上の労働者を使用する事業場は、選任すべき事由が発生した日から14日以内に産業医を選任し、選任後は遅滞なく所轄の労働基準監督署へ報告します。期限が「14日以内」と定められているのは選任で、報告は「遅滞なく」です。産業医は、健康診断後の意見、長時間労働者や高ストレス者への面接指導、職場巡視、衛生委員会での助言などを行います。

1,000人以上の事業場、または一定の有害業務に常時500人以上が従事する事業場では、専属産業医が必要です。3,001人以上の事業場では2人以上を選任します。

候補探しの進め方は産業医の探し方と依頼・契約の手順、依頼できる業務は産業医サービスの内容をご覧ください。

2.衛生管理者を選任する

衛生管理者も、選任すべき事由が発生した日から14日以内に選任し、選任後は遅滞なく労働基準監督署へ報告します。必要な資格は業種によって異なります。主な業務は、週1回以上の職場巡視、作業環境や設備の点検、健康管理に関する実務です。

3.衛生委員会を設置する

衛生委員会は毎月1回以上開催し、健康障害防止、健康保持増進、労働災害の原因と再発防止などを調査審議します。議事の概要は従業員へ周知し、重要な記録は3年間保存します。

4.ストレスチェックを実施する

1年以内ごとに1回、対象となる従業員へ受検の機会を提供します。個人結果は本人へ直接通知し、本人の同意なく事業者が取得してはいけません。高ストレス者から申出があった場合は、医師による面接指導につなげます。実施後は、所定の様式で労働基準監督署へ報告します。

50人未満の事業場についても、2028年4月1日から実施が義務化されます(厚生労働省の案内)。関連記事:【2028年4月義務化】50人未満の事業場が始めるストレスチェック準備

5.定期健康診断結果を報告する

常時50人以上の労働者を使用する事業場は、定期健康診断を実施したとき、結果報告書を遅滞なく所轄の労働基準監督署へ提出します。「毎年6月30日まで」という一律の期限ではない点に注意してください。

なお、2025年1月1日から、産業医・衛生管理者等の選任報告、定期健康診断結果報告、ストレスチェック結果報告などは、原則として電子申請が義務づけられています。書面での提出を前提にしている場合は、e-Govでの手続きに切り替える準備が必要です。

6.休養室・休養所を確保する

常時50人以上、または常時30人以上の女性労働者を使用する事業場は、労働者が横になれる休養室または休養所を、男性用と女性用に区別して設けなければなりません。人数そのものが基準になる義務ですが、産業医や衛生管理者に比べて見落とされやすい項目です。

ただし、専用の部屋を常に2室空けておく必要まではありません。行政解釈では、専用設備として設けなくても、随時利用できる機能を確保すれば足りるとされています。会議室などを必要なときに使える形にしておき、入口からの目隠しなど、横になっても人目に触れない配慮をあわせて整えます。

業種によって必要になるもの|安全管理者・安全委員会

ここまでの6つは全業種に共通する対応です。業種によっては、50人到達時に次の対応も必要になります。

安全管理者の選任

林業、鉱業、建設業、運送業、清掃業、製造業(物の加工業を含む)、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゅう器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・じゅう器等小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備業、機械修理業では、常時50人以上で安全管理者を選任します。産業医や衛生管理者と同じく、選任は14日以内、報告は遅滞なくです。

安全委員会の設置

林業、鉱業、建設業や、製造業の一部(木材・木製品製造業、化学工業、鉄鋼業、金属製品製造業、輸送用機械器具製造業)などでは、常時50人以上で安全委員会の設置が必要です。その他の製造業・運送業や、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業などは100人以上が基準です。衛生委員会は業種を問わず50人以上で必要になります。

安全委員会と衛生委員会の両方を設けなければならない事業場では、それぞれの委員会に代えて、安全衛生委員会としてまとめて設置することができます。

自社の業種がどれに当たるか判断に迷う場合は、所轄の労働基準監督署へ確認してください。

50人到達前後の準備スケジュール

到達が見込まれる1〜3か月前

  • 事業場ごとの常時使用労働者数を確認する
  • 産業医候補と衛生管理者候補を決める
  • 衛生委員会の構成と年間予定を作る
  • ストレスチェックの実施方法と委託先を検討する

50人に到達した後

  • 産業医・衛生管理者を期限内に選任し、報告する
  • 衛生委員会を毎月開催する
  • 健康診断結果について医師の意見を聴き、必要な就業上の措置を行う
  • ストレスチェックの年間計画を実行する

選任・届出・運用を別々に管理する

対応時期と確認点
産業医・衛生管理者の選任選任すべき事由が発生した日から14日以内。資格・受任の確認を先に進める
選任報告選任後、遅滞なく提出。14日以内という選任期限と混同しない
衛生委員会対象となったら設置し、毎月1回以上開催。委員会自体の設置届は不要
定期健康診断の結果報告実施後、遅滞なく提出。健診計画と報告担当を合わせて管理する

電子申請の準備は、産業医・衛生管理者選任報告の手順をご覧ください。社内の初動確認には、産業医選任の無料ガイドも使えます。

50人到達前の実務チェックリスト

  • 事業場ごとの従業員名簿を作り、雇用形態・勤務場所・雇用期間を整理する
  • 50人に到達する見込み時期を採用計画とあわせて毎月確認する
  • 産業医・衛生管理者の候補者と契約・選任までの期間を確認する
  • 衛生委員会のメンバー、年間日程、議題、議事録の保存方法を決める
  • ストレスチェックと健康診断結果報告の担当者・委託先を決める

従業員50人以上についてよくある質問

会社全体で50人を超えたら対象ですか?

原則は事業場単位です。本社30人、支店25人のように分かれている場合、単純に合計55人だから直ちに各事業場が対象になるとは限りません。場所・組織・労務管理の独立性を含めて確認します。

パートや契約社員も50人に含まれますか?

常態として使用している場合は、正社員以外も対象人数に含まれ得ます。名称だけで除外せず、雇用期間や勤務実態を確認してください。

一時的に50人を下回った場合はどうしますか?

一時的な増減だけで運用を止めず、雇用実態と今後の見込みを確認します。継続的に基準を下回る場合を含め、個別判断が必要なときは所轄の労働基準監督署へ相談しましょう。

早めに産業保健体制を整えましょう

50人到達時の対応は、産業医契約だけでは完了しません。衛生管理者、衛生委員会、健康診断後の措置、ストレスチェックを一つの年間運用として設計すると、抜け漏れを防ぎやすくなります。

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産業保健の仕組みづくりを支援します

なごみ産業医事務所では、法令対応だけでなく、企業の状況に合わせた実務運用まで一緒に整えます。

なごみ産業医事務所
■事業所名

なごみ産業医事務所

■設立

2024年11月

■代表者

白澤一弘

■所在地

〒141-0031
東京都品川区西五反田2-9-7 ドルミ五反田407号

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