【衛生委員会・立ち上げ】企業が押さえておくべき法的ポイントと実務上の注意点

従業員数が50人を超える企業では、「衛生委員会」の設置が労働安全衛生法によって義務づけられています。これは単なる形式的な義務ではなく、従業員の健康管理や職場の安全衛生水準の向上に関わる重要な取り組みです。

しかし実際には、

  • 「誰をメンバーにすればよいのか分からない」
  • 「“労働者側委員”とは具体的に誰を指すのか?」
  • 「設置にあたって届出や手続きは必要?」

といった声を多く耳にします。

本記事では、これから衛生委員会を設置する企業の方々に向けて、「構成メンバーの要件」と「設置に必要な法的手続き」について、産業医の立場から分かりやすく解説します。


衛生委員会とは?義務となる基準と目的

まず衛生委員会の基本的な概要を確認しましょう。

● 法的根拠

衛生委員会は、労働安全衛生法第18条および労働安全衛生規則第22条に基づいて設置されます。

● 設置義務のある事業場

以下のすべてに該当する事業場には、衛生委員会の設置が義務づけられます。

  • 常時使用する労働者数が50人以上
  • 主に**非製造業(サービス業、商業、IT業など)**の事業場
    (製造業や鉱業など一部業種では、労働安全委員会の設置が必要)

● 設置の目的

  • 労働者の健康障害防止・健康保持増進
  • 作業環境の改善や快適職場の形成
  • 労働衛生教育やメンタルヘルス対策の推進

衛生委員会の構成:労働者側と事業者側の区別とは?

衛生委員会は、次のような構成が求められています(安衛則22条)。

● 衛生委員会の構成員(法定メンバー)

  1. 総括安全衛生管理者(必要な場合)
  2. 衛生管理者
  3. 産業医
  4. 労働者を代表する者(=労働者側委員)
  5. その他、事業者が指名する者

このうち、最も混乱が生じやすいのが「労働者を代表する者」です。

● 「労働者側委員」とは?

厚生労働省の通達(基発第546号など)では、労働者側委員について以下のように定めています:

  • 「事業者の指名によらず、労働者の推薦または投票などによって選出される」必要がある
  • 管理監督者(部長など)は原則として該当しない

✦「部長は労働者側になれるか?」という問いについて

労働基準法第41条における「管理監督者」に該当する者(部長・課長など、使用者側の立場にある者)は、労働者側委員にはなれません

つまり、

「誰が従業員の代表として発言するか」がポイントであり、事業者が任命した“形式的な労働者”では要件を満たしません。

以下のような選出方法が求められます:

  • 労働組合がある場合:労働組合の推薦
  • 労働組合がない場合:労働者全体からの投票・話し合いで選出

● 労働者側委員は過半数代表者と兼任可能

ストレスチェックの実施や労使協定の締結などで選任される「労働者の過半数代表者」との兼任も可能です。手続きの簡素化のため、実務上は兼任するケースも多く見られます。


衛生委員会の設置にあたっての手続き・届け出は必要?

「衛生委員会を設置したら、労働基準監督署などへの届け出は必要なのか?」という質問もよくいただきます。

● 結論:設置の届け出は不要です

労働基準監督署などへの「届け出」や「許可」は必要ありませんが、以下のことが法的に求められています。


衛生委員会の運営ルールと実務上の留意点

① 毎月1回以上の定例開催が義務

  • 月1回以上、定期的に開催すること
  • 欠席者が多いと「実態がない」と判断される可能性あり

② 議事録の作成と3年間の保存義務(安衛則24条)

  • 内容は簡潔でもよいが、日時・出席者・議題・意見などを記録
  • 労働基準監督署から求められた場合は提出可能な状態にしておくこと

③ 書面による委員の選任通知委嘱状は作成すべき

  • 法的には様式は定められていませんが、企業としての記録管理のために書面化が望ましい

衛生委員会の議題例:何を話し合えばよいのか?

初回の委員会でよく出る議題やテーマには、以下のようなものがあります。

主な議題内容の例
作業環境の改善空調、照明、騒音、換気の見直し
健康診断の実施と事後措置再検査対象者への対応、有所見者のフォロー
メンタルヘルス対策ストレスチェックの実施、相談体制の構築
感染症対策インフルエンザ・新型コロナウイルス対応
長時間労働の是正時間外労働者への面談実施体制の整備

衛生委員会の支援サービス:設置から運営までお任せください

衛生委員会の設置は、単なる“義務対応”ではなく、従業員の健康と企業の信頼性を支える重要な取り組みです。

しかし、実務的には

  • 「誰を選べばいいのか分からない」
  • 「何を話せばいいのか不安」
  • 「議事録の作成が負担」

といった悩みもつきものです。

当社では、産業医としての専門知見を活かし、以下のサポートをご提供しています:

  • 委員構成のアドバイス(労働者側の適切な選出方法の支援)
  • 初回委員会のファシリテート
  • 議題案・議事録フォーマットの提供
  • 衛生委員会の年間運営計画の策定支援

お気軽にご相談ください。


まとめ

項目内容
衛生委員会の義務常時50人以上の事業場で設置が義務
労働者側委員の定義労働者の「選出」で選ばれた者(管理職は不可)
届出労基署等への提出は不要だが議事録の保存義務あり
開催頻度毎月1回以上
議事録作成・3年間保存義務あり
実務の支援委員構成・運営計画・議事録支援も可能

企業の成長と従業員の健康は両輪です。衛生委員会を単なる「義務」で終わらせず、組織の健康経営に活かしましょう。

なごみ産業医事務所
■事業所名

なごみ産業医事務所

■設立

2024年11月

■代表者

白澤一弘

■所在地

〒141-0021
東京都品川区上大崎3-14-12  井上電気ビル401

■FAX

03-5422-9262

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