産業医の巡視は2か月に1回にできる?条件・同意の手順と、毎月渡す情報【Excel書式つき】

執筆・監修:白澤一弘(日本医師会認定産業医)
最終確認日:2026年11月2日

結論

  • 産業医の巡視は、原則として少なくとも毎月1回です(労働安全衛生規則 第15条第1項)
  • 条件①: 会社が産業医に、毎月1回以上、決まった情報を渡している(衛生管理者の巡視の結果と、衛生委員会などで話し合って会社が渡すと決めた情報。施行通達は、長時間働いた人の情報も渡していることを求めています)
  • 条件②: 2か月に1回にすることに、会社が同意している(同意の前に、産業医の意見をもとに衛生委員会などで話し合い、期間を決める)
  • この2つがそろっているときに限り、少なくとも2か月に1回にできます。産業医の日程が合わないことだけを理由に、回数を減らすことはできません
  • 期間の途中で情報を渡せなかった月や、衛生管理者の毎週の巡視ができていないときは、毎月1回の巡視に戻ります
  • 回数が減るのは巡視だけです。衛生委員会や、長時間働いた人の情報を産業医に渡すことなど、ほかの決まりは変わりません

毎月渡す情報をまとめるExcelの書式(衛生管理者の巡視記録・産業医への毎月の情報提供シート)を、無料で配布しています(会社名・お名前・メールアドレスの入力が必要です)。

巡視の記録と、産業医への毎月の情報提供シートをダウンロードする →

産業医と衛生管理者の巡視の頻度

巡視する人頻度根拠
衛生管理者少なくとも毎週1回労働安全衛生規則 第11条第1項
産業医少なくとも毎月1回。条件を満たし、会社の同意を得ている場合は、少なくとも2か月に1回労働安全衛生規則 第15条第1項

どちらも、巡視で有害のおそれがあると分かったときは、直ちに必要な措置をとることになっています(同 第11条第1項・第15条第1項)。

この義務があるのは、産業医と衛生管理者を選ぶ義務がある、常時50人以上の労働者を使用する事業場です。人数は会社全体ではなく、事業場ごとに数えます(「従業員50人で発生する6つの義務と期限」)。2か月に1回にするかどうかも、事業場ごとに決めます。

2か月に1回にできる条件

条文では、産業医が会社から毎月1回以上、下の表の1つ目と2つ目の情報を受け取っていて、会社の同意を得ているときに、少なくとも2か月に1回にできる、とされています。進め方の細かいところは、厚生労働省の施行通達(平成29年3月31日 基発0331第68号)が示しています。

条件1 毎月1回以上、決まった情報を受け取っている

渡す情報中身根拠
衛生管理者の巡視の結果巡視した衛生管理者の氏名、巡視の日時、巡視した場所/有害のおそれがあると判断したことと、講じた措置/そのほか、労働衛生対策の参考になること同 第15条第1項第1号・施行通達
衛生委員会などで話し合い、会社が産業医に渡すと決めた情報例: 健康への配慮が必要な労働者(労働安全衛生法 第66条の9)の氏名と労働時間数/新しく使う予定の化学物質・設備の名前と、その作業条件・業務の内容/労働者の休業の状況同 第15条第1項第2号・施行通達
長時間働いた人の情報時間外・休日労働の時間が月80時間を超えた人の氏名と、その時間に関する情報。いない月は「いない」という情報同 第14条の2・施行通達

2つ目の情報の中身は、事業場の実情に合わせて、衛生委員会(安全衛生委員会を置いている事業場はそちら)で話し合って決めます。表の例は、施行通達に挙がっているものです。

3つ目の長時間働いた人の情報について、施行通達は、2か月に1回にするときは1つ目・2つ目と一緒にこの情報も産業医に渡されていることが必要、としています。通達が出た当時、産業医に渡す義務があったのは月100時間超の人の情報でした。今は、月80時間超の人の情報を渡すことが、巡視の回数にかかわらず義務になっています(同 第14条の2)。

条件2 会社が同意している

施行通達は、同意の進め方を次のように示しています。

  • 同意は、産業医の意見をもとに、衛生委員会などで話し合った結果を踏まえて行う
  • 2か月に1回にする期間を決める
  • その期間ごとに、産業医の意見をもとに話し合い直す

厚生労働省の資料の例では、4月から9月の6か月間を2か月に1回にすると衛生委員会で決めたら、10月の衛生委員会で、そのままでよいかをもう一度話し合います。

途中で条件が欠けたら、毎月に戻る

2か月に1回にできるのは、決めた期間中、毎月1回以上、必要な情報が渡されている場合だけです。施行通達は、情報が渡されなかった場合や、衛生管理者の毎週1回の巡視が行われていない場合は、少なくとも毎月1回の巡視が必要になる、としています。

始めるときにそろえるだけでなく、期間中ずっと続けることが条件です。

長時間働いた人の情報は、別のタイミングでも渡す

月80時間を超えた人の情報は、巡視の回数に関係なく、産業医を選んでいる事業場では義務です。渡す時期は「時間外・休日労働の時間を算定したあと、速やかに」と決まっています(同 第14条の2第2項第2号)。

毎月の情報をまとめて渡す日を待つ必要はありません。算定が終わったらすぐ渡し、毎月の情報提供シートにも、渡した日を書いておくと漏れません。

該当する人がいない月も、「該当者はいない」という情報を産業医に伝える必要があります(平成30年12月28日 基発1228第16号 問5)。空欄のまま出すのではなく、「該当なし」と書いて渡してください。

時間は、休憩時間を除いて週40時間を超えて働いた時間(時間外・休日労働の時間)で数えます。高度プロフェッショナル制度の対象者は、健康管理時間のうち週40時間を超えた時間で数えます。

2か月に1回にしても、変わらないこと

変わらないこと根拠
衛生管理者の巡視は、少なくとも毎週1回同 第11条第1項
衛生委員会は、毎月1回以上開く同 第23条第1項
有害のおそれがあれば、直ちに必要な措置をとる同 第11条第1項・第15条第1項

労働局の資料も、この改正は「巡視の頻度」に関わることだけで、産業医の職務を軽くすることを予定したものではない、と注意しています。毎月の情報で職場の様子をつかみ、そのぶん巡視の回数を減らす、という考え方です。

2か月に1回にする進め方(5つの段階)

段階やること残すもの
1. 毎週の巡視を記録する衛生管理者が毎週1回巡視し、1か月分を記録にまとめる衛生管理者の巡視記録
2. 衛生委員会で話し合う産業医の意見を聞き、毎月渡す情報と、2か月に1回にする期間を話し合う衛生委員会の議事録
3. 会社が同意する話し合いの結果を踏まえて、会社が同意する議事録(産業医の意見・話し合いの結果・会社の同意・期間・渡す情報)
4. 毎月、産業医に情報を渡す巡視をする月もしない月も、毎月1回以上渡す情報提供シート(渡した日)
5. 期間の区切りで見直す産業医の意見をもとに、続けるか、毎月に戻すかを話し合う衛生委員会の議事録

見直しの時期について、厚生労働省の資料の例は、期間が終わった翌月の衛生委員会です。配布する書式の記入例では、期間が切れる前に続けるかどうかを決めておけるよう、期間の最後の月の衛生委員会にしています。どちらにしても、見直しの予定を議事録に書いておきます。

同意の書き方は、法令で決まった様式はありません。あとで見直すときに迷わないよう、議事録に、産業医の意見、話し合いの結果、会社が同意したこと、決めた期間、毎月渡す情報を残しておくと確実です。衛生委員会の意見と、それを踏まえて講じた措置などの記録は、3年間の保存が義務です(同 第23条第4項)。

段階1の巡視で△や×をつけるときは、物がそこに置いてある理由を、まず職場の人に聞いてください。理由が分かると直し方を一緒に決めやすくなり、産業医に渡す情報も「何が起きていて、どうしたか」まで書けるようになります。

毎月の情報をまとめる書式(Excel)

条件1の情報を毎月そろえるための書式を、2つのExcelファイルにしました。どちらも、記入用のシートと記入例が入っています。

衛生管理者の巡視記録の書式。28の点検項目と第1週から第5週の列、△・×の内容と措置の表
巡視の記録(記入用)。1か月分を1枚にまとめます

巡視の記録(衛生管理者の巡視記録・産業医の巡視報告)

施行通達が挙げる「巡視の結果」書式の欄
巡視した衛生管理者の氏名・巡視の日時・巡視した場所週ごとの列の上にある「日付・時刻」「巡視した衛生管理者」「巡視した場所」
有害のおそれがあると判断したことと、講じた措置点検項目ごとの〇△×と、「△・×の内容と措置」の表(場所と状態・その場で講じた措置・追加の対応・完了日)
労働衛生対策の参考になること「この月の、労働衛生対策の参考になること」の欄
  • 点検項目は、オフィスでよく見る28項目を縦に、第1週〜第5週を横に並べ、1か月分を1枚に記録します。週は月曜から日曜で数え、月をまたぐ週は巡視した日の月に書きます。同じ週に2回巡視したときなど、欄が足りないときは別紙に続けてください
  • 前の月から直っていない△・×は、その月の表にも書き写して、終わるまで追いかけます
  • 社内で共有する記録なので、指摘の対象になった従業員の氏名や、個人の健康情報は書きません(場所と状態で書きます)
  • 28項目はオフィスの例です。工場、倉庫、店舗などの作業場がある事業場は、作業や設備に合わせて項目を足してください。介護施設版と病院版の巡視チェックリストもあります
  • 2つ目のシートは、産業医が巡視した月に、衛生委員会で報告するための記録です

産業医への毎月の情報提供シート

  • 2か月に1回にするためにそろえること(毎月の情報・産業医の意見をもとにした話し合い・期間・会社の同意の4つ)と、次の見直しの予定を確かめる欄
  • ア 衛生管理者の巡視の結果: 1か月分の巡視記録を添えるときは、日時と「巡視記録のとおり」だけでかまいません
  • イ 衛生委員会で話し合い、会社が渡すと決めた情報
  • ウ 月80時間を超えた人: 渡す時期がアとイと違うので、印刷したときの2ページ目に分けています。該当する人がいない月は「該当なし」と書きます
産業医への毎月の情報提供シートの記入例。2か月に1回にするためにそろえること、衛生管理者の巡視の結果、衛生委員会で決めた情報
産業医への毎月の情報提供シート(記入例・架空の内容)

毎月の使い方

  1. 衛生管理者が、巡視のたびに、その週の列に日付・時刻、巡視した衛生管理者、巡視した場所を書き、点検項目に〇△×をつける
  2. △・×をつけたら、下の表に場所と状態、その場で講じた措置、追加の対応(担当・期限)を書く。前の月から終わっていないものも書き写す
  3. 月が終わったら、労働衛生対策の参考になることを書いて、1か月分の巡視記録を仕上げる
  4. 情報提供シートのアとイを書き、巡視記録を添えて産業医に渡す。両方に渡した日を書く
  5. 月80時間を超えた人の情報(ウ)は、時間を算定したら月末を待たずに渡す。いない月も「該当なし」と伝える

情報提供シートには、従業員の氏名や労働時間が入ります。巡視の記録とファイルを分けたのはそのためです。情報提供シートは産業医に渡すためだけに使い、掲示や回覧はしないでください。衛生委員会の議事の概要を職場に知らせるときも、このシートは載せません。

巡視の記録と、産業医への毎月の情報提供シートをダウンロードする →

よくある質問

衛生管理者が毎週巡視していないと、2か月に1回にはできませんか?

できません。条件の1つ目は、衛生管理者が少なくとも毎週1回行う巡視の結果を、産業医に毎月渡すことです(労働安全衛生規則 第15条第1項第1号)。施行通達も、衛生管理者の巡視が週1回以上行われていない場合は、産業医の巡視は少なくとも毎月1回必要としています。

巡視をしない月も、産業医に情報を渡すのですか?

渡します。条件は、産業医が毎月1回以上、情報を受け取っていることです(同 第15条第1項)。巡視をする月も、しない月も渡します。

2か月に1回にする期間は、どのくらいにすればよいですか?

法令に決まりはありません。施行通達は、期間を決めたうえで、その期間ごとに産業医の意見をもとに衛生委員会などで話し合い直すとしています。厚生労働省の資料は、例として4月から9月の6か月間を挙げています。

産業医の巡視を、オンラインで行うことはできますか?

法令で決まった定期巡視は、オンラインでは行えません。厚生労働省は、産業医の定期巡視は、少なくとも毎月1回(条件を満たす場合は少なくとも2か月に1回)、産業医が実地で行う必要があるとしています(令和3年3月31日 基発0331第4号)。

巡視の記録と、産業医への毎月の情報提供シートをダウンロードする →

巡視の回数や、毎月の情報の渡し方を相談したいとき

なごみ産業医事務所では、定期の職場巡視と、指摘したことが直るまでのフォローを一緒に行っています。「今の体制で2か月に1回の条件を満たせるか確かめたい」「毎月の情報の渡し方を整えたい」という段階のご相談も受けています。

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参考資料

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の判断は、最新の法令・社内規程を確認したうえで行ってください。

なごみ産業医事務所
■事業所名

なごみ産業医事務所

■設立

2024年11月

■代表者

白澤一弘

■所在地

〒141-0031
東京都品川区西五反田2-9-7 ドルミ五反田407号

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