
長時間労働がもたらす健康リスク
長時間労働は、脳・心臓疾患(過労死)やメンタルヘルス不調の大きなリスク要因です。時間外・休日労働時間が月80時間(いわゆる「過労死ライン」)を超えると、脳・心臓疾患の発症リスクが急激に高まるとされています。
また、長時間労働は睡眠時間の減少、運動不足、食生活の乱れなど、生活習慣全般に悪影響を及ぼします。うつ病や適応障害などのメンタルヘルス不調との関連も多くの研究で示されており、企業として適切な対策を講じることが求められています。
産業医面談が必要となるケース
労働安全衛生法第66条の8では、時間外・休日労働時間が月80時間を超え、かつ疲労の蓄積が認められる労働者が申し出た場合、事業者は医師(産業医)による面接指導を行わなければなりません。
さらに、2019年4月の働き方改革関連法の施行により、以下のルールが追加されました。産業医を選任している事業場では、時間外・休日労働時間が月80時間を超えた労働者の氏名と超過時間を産業医に情報提供することが義務化されています。研究開発業務従事者は月100時間超で申出なしでも面接指導が義務、高度プロフェッショナル制度対象者は健康管理時間が月の基準を超えた場合に面接指導が義務となっています。
産業医面談の具体的な流れ
1. 対象者の把握
人事部門で毎月の時間外・休日労働時間を集計し、月80時間を超えた従業員をリストアップします。該当者には面接指導の申出ができることを通知します。なお、月80時間に満たなくても、疲労が蓄積していると思われる従業員には、積極的に面談の機会を提供することが望ましいです。
2. 面接指導の実施
産業医が対象者と面談を行い、勤務状況、疲労の蓄積状況、心身の状況を確認します。具体的には、労働時間の実態、睡眠時間、疲労感、食欲の変化、気分の変調などをヒアリングし、必要に応じて血圧測定などの身体的な確認も行います。
3. 意見書の作成
面接指導の結果に基づき、産業医は事業者に対して意見書を提出します。意見書には、就業区分(通常勤務可・就業制限・要休業)と、必要な措置の内容が記載されます。労働時間の短縮、深夜業の回数制限、作業の転換、療養のための休業などが含まれます。
4. 事後措置の実施
事業者は産業医の意見を尊重し、必要な措置を遅滞なく講じなければなりません。措置の実施後も、定期的に状況を確認し、必要に応じて措置内容を見直します。
企業が取り組むべき長時間労働対策
労働時間の適正な把握:2019年の法改正により、客観的な方法(ICカード、PCログ等)による労働時間の把握が義務化されました。自己申告制の場合は、実態との乖離がないか定期的に確認しましょう。
36協定の適切な運用:時間外労働の上限規制(原則月45時間・年360時間)を遵守するとともに、36協定の特別条項が安易に発動されないよう管理体制を整えましょう。
管理職への教育:管理職は部下の労働時間を把握し、適切にマネジメントする責任があります。長時間労働のリスクに関する教育を実施し、意識改革を促すことが重要です。
業務の見直し:長時間労働の根本原因を分析し、業務の効率化、人員配置の見直し、外部委託の活用などの対策を講じましょう。
産業医と連携した長時間労働対策
産業医は、面接指導を通じた個別対応だけでなく、衛生委員会での長時間労働防止策の提案、管理職向けの啓発活動、職場巡視での実態把握など、多角的に長時間労働対策をサポートします。
なごみ産業医事務所では、長時間労働者への面接指導をはじめ、労働時間管理体制の構築支援、衛生委員会での改善提案まで、包括的にサポートしています。「長時間労働者への対応に困っている」「面接指導の体制を整えたい」という企業様は、ぜひご相談ください。


